2019年3月29日金曜日

ラブレーによるソクラテス、そしてアランによるラブレー



フランソワ・ラブレーの名はフランスで招聘研究員となった大学にも付いていたので気になっていた
夜、最初の学生時代に買った記憶はあるが、読んだことはないと思われたラブレーの名が本棚に見えた
筑摩書房の世界文學大系8「チョーサー、ラブレー」(昭和36年)で、ラブレーは渡辺一夫訳である
『第一之書 ガルガンチュア物語』の冒頭にある「作者の序詞」に目を通す

この中だけで次のような名前が出てきて驚くと同時に、ラブレーの印象が変わる

プラトン、『饗宴』、『国家』、アルキビアデス、ソクラテス、ガレノス、ピュタゴラス、ホメロス、『イリアス』、『オデュッセイア』、プルタルコス、ポントゥスのヘラクレイデス、エウスタティウス、ポルヌトゥス、ポリティアヌス、オウィディウス、『変身賦』 、ホラティウス、デモステネス、エンニウス、、、

『饗宴』のつながりで、ソクラテスをこう描写している

  •  上辺を見ると、葱の皮一枚ほどの値打ちもなかろうと思われるくらいに
「体の格好は醜く、挙措は滑稽で、鼻はとがり、眼差しは牡牛のごとく、顔つきは瘋癲も同然、暮らし方は簡素無二、粗野な衣をまとい、金運に乏しく、女運にも恵まれず、一切の国家公共の責務に適せず、常に哄笑を事とし、常に相手を選ばずに酒杯の応酬を重ね、常に嘲弄をほしいままにし、常にその神々しい知恵をば隠蔽していた」

  • ところが、その中には高貴無上の神薬が蔵めてあったのだ
「すなわち、人間のものとは思われぬほどの思慮、驚くべき才徳、不屈の勇気、並びない節制力、ゆるぎない恬淡無欲、完璧な確信、俗世の人間どもが不眠不休、東奔西走、汗水流したり、海原に乗り出したり、剣戟を交えたりしてなおも願い求める一切のものに対する信ぜられぬほどの侮蔑の念、こういうものが見られるに相違ない」


昔買った本を紐解く悦びの一つが、当時の自分を垣間見る瞬間があることだろう
それは今や全くの別人ではあるのだが、、
この冒頭部分とアランによる『ラブレー』と題するエッセイの中に読んだ痕跡があった
以下に書き出してみたい

序詞では、骨髄のある骨を熱情を込めて噛みつき砕く犬について触れている
それは、ガレノスが言うように、骨髄は完全無欠に精錬された自然の糧だからという
その続きがマークされていた
「この犬にならい、諸君も事理に聡くなられ、滋味に富んだこれらの良書の香気を嗅ぎだし、その真価を探りあて、これをこよなきものと思うべきであり、獲物を追うにあたっては軽捷、これに立ち向かうに際しては大胆たるべきだ。そして入念にこれを繙読し、瞑想の数を重ね、骨を噛み砕いて、滋養豊かな精髄をーーすなわち、余がこのビュタゴラス流の寓意によって言おうとするものをーー綴るべきであり、このようにして読書をおこなえば、分別もでき、立派な人間にもなれるという確固たる希望を持たれて然るべきだ」
そして、アランの文章では以下の部分に印があった
「医者である彼は、ひとが隠そうとする欲求を顕わす。この自然の欲求は彼の神だ。欲求を恥じることは神を瀆すことだ。これはなにも彼にかぎったことではない。われわれ誰しも生まれながらこの卑猥な本性を具えていて、それを恥じねばならぬと思っている。恥じてはならぬ。人間の本性のすべてを受け入れねばならぬ。さもなくば偽善しかない」
 「ひとはもはや人間をおそれない。『人間ハ人間ニトッテ神ナリ(ホモ・ホミニ・デウス)』という美しい公式が今やふさわしい。恐れなき思想のみが人間の持ち物の中で希望を与える唯一のものだ。尊厳が描き出され、偉大な人間像がその畏怖すべき裸形のままに現れる。これは教養というものがいかに大きな成果を挙げうるかの証左だが、教養とは母国語の崇拝だ。人間を飾るものは言語しかない。そして、プルードンの言ったように、書くのが下手な者はかならず考えることも下手だ。文章の技法がすべてだと言ったのは諸君ご存じの別の男(フローベール)だが、これは言いすぎだ」





2019年3月26日火曜日

ご紹介: パスカル・コサール著『これからの微生物学』の「訳者あとがき」



パスカル・コサール著『これからの微生物学』(拙訳)が先週刊行されました
本日、その「訳者あとがき」がみすず書房サイトのトピックス欄に掲載されました
こちらから
是非お読みいただき、本書を実際に手に取っていただければ幸いです
よろしくお願いいたします






2019年3月25日月曜日

サイファイ研ISHEの催し物のお知らせ

 


サイファイ研ISHEの春の活動を紹介いたします  
興味をお持ちの方の参加をお待ちしております


● 第14回サイファイ・カフェSHE
2019年4月12日(金)18:3020:30

● 第8回カフェフィロPAWL
2019年4月17日(水)18:30-20:30 

第5回ベルクソン・カフェ
2019年5月21日(火)18:00-21:00
2019年5月28日(火)18:00-21:00
(1回だけの参加でも問題ありません)
(ピエール・アドー「読むことを学ぶ」)
Exercices spirituels et philosophie antique (Albin Michel, 2002) pp. 60-74
恵比寿カルフール B会議室

2019年5月18日(土)午後
日仏会館 509会議室
プログラムは決まり次第お知らせいたします





2019年3月23日土曜日

第7回サイファイ・カフェSHE札幌、無事終わる




本日は第7回のSHE札幌カフェを開催した
お忙しい週末にもかかわらず新しい方が3名参加された
参加された皆様には改めて感謝したい

新しい方の参加理由はそれぞれ興味深いものがあった
日頃から子供に接する機会が多いが、その質問の哲学的なことに驚き、その世界を知りたくなった
仕事をしながら演劇や映画の脚本を書くことができればと考えており、霊感を得ることを期待した
医学の研修を終えた後、科学哲学の大学院に入り、偶然にポスターを見て興味を持った
などなど
それぞれの背景からの疑問の提示や発言があり、活発な議論ができたのではないだろうか

今回のテーマは、「植物の生について考え直す」であった
植物は地球のバイオマスの80%を超える
それにもかかわらず、その扱いは人間や動物に比べると雑なのではないか
我々の視界にはあるものの背景に追いやられていることが多いのではないか
植物に対する我々の見方がどのような哲学により拘束されているのか
特に西欧の人類の歴史を辿り、その背景を考察した

人間中心的なものの捉え方が環境破壊にも繋がっているという見方がある
その背後にキリスト教の影響があるという立場である
しかし、その影響が少ない日本でも同様に環境破壊は進んでいる
そこには何があるのだろうか

このような人間の行いに対して「草木国土悉皆成仏」を唱えるだけで立ち向かえるのだろうか
あるいは全く別の、しかも多くの人が共有できる哲学の確立が必要になるのだろうか
それは言うは易く、極めて難しいもののように見える

会のまとめは、近いうちに専用サイトに掲載する予定です
御意見をいただければ幸いです


懇親会場に向かうため外に出ると雪
北国ならではの光景であった






2019年3月15日金曜日

パスカル・コサール著『これからの微生物学』の見本ができる



来週23日に刊行予定のパスカル・コサール著『これからの微生物学』(拙訳)の見本ができた
上のような表紙になっている
原著とはだいぶ趣が異なっている
それは昨年出したクリルスキーさんの本も同様だった
東洋に来ると大きく変容するようだ

内容の詳細はこちらを参照していただければ幸いである
微生物を取り巻く世界が多面的に描かれていて、いろいろな発見があるだろう

是非お読みいただければ幸いです
よろしくお願いいたします







2019年3月12日火曜日

本庶佑先生ノーベル賞受賞記念講演会と晩餐会に出席

   記念講演をされる本庶教授


今夜は本庶教授の祝賀会に出かけた
500人を超える方が参加された大がかりなものであった
司会は元NHKの宮本隆治アナウンサー
これまでのノーベル賞受賞者3名(野依良治、田中耕一、大村智の各氏)も参加されていた




会の冒頭にこの方が祝辞を読み上げたのには驚いた
会場には下村博文、山谷えり子などの政治家の他、デビ夫人、吉村真理さんなどの芸能人も
他にもいろいろな方が顔を見せていたのではないかと想像している
個人的には、大阪大学の元総長岸本忠三先生に本当に久しぶりにお会いできたのは幸いであった
驚いたことに拙エッセイも「何やら難しいこと書いとるな」 とお読みいただいているようで恐縮する



  

会は立食ではなく、着座式でわたしのテーブルにはこのような方が一緒になった
左から伴真伊(パスツール研)、安藤淳(日経新聞)、上田善久(弁護士)の各氏
そしてパスツール研の微生物学研究者(名刺をお持ちでないとのことで名前を失念した)

伴さんとはわたしがフランスに渡った時に一度お会いしたことがある
今も研究のコーディネーションをやっておられるとのことだが、研究者の評判は良かった

安藤さんは科学をカバーされているとのこと
外から見た科学についていずれお伺いしたいところである

上田さんは大蔵省出身でJICA理事を経て大使をやられたとのこと
現在は弁護士としてご活躍中である

パスツール研の研究者は日本料理の見栄えの美しさと音楽性について語っていた
それから日本人とフランス人のものの見方や考え方の違いについて興味深いことを話していた
日本人の両親の下、フランスで教育を受けた研究者にも微妙な違いが見えるという
明日、フランス大使館でのセミナーが予定されているようだ




もう半分のテーブルにはこの方たちがいた
左からソフィー・ドゥ・ベンツマン(フランス大使館)、イザベル・ビュクル(パスツール研)、坂田秀雄(ネオファーマ・ジャパン)の各氏

ソフィーさんは科学技術担当官で、微生物学者
まだ日本に来て日が経っていないようで、日本社会における女性の地位について質問していた
哲学者と聞いたので、この問題をどう分析しているのか知りたいというのだ
向こうの人が問う時には、本当に答えを求める迫力がある
これからも機会があれば、いろいろな問題についてディスカッションしたいものである

そして、イザベルさんは技術移転の責任者
翻訳の話をすると、今夜の写真をクリルスキーさんとコサールさんに送っておくと言ってくれた

坂田さんは、医薬品開発の責任者をされているとのこと
それから写真撮影の前に退席されたパスツール研でご活躍の島川祐輔さんもおられた
新興感染症の疫学を専門にされていて、日本との共同研究も計画されているようであった


研究の世界も世界的な連携が益々重要になるという印象である
今夜はいろいろな分野の方にお会いすることとなり、想像以上の刺激を受けた一夜であった
いずれその影響を見ることができるだろうか
注意深く観察したい





2019年3月5日火曜日

第7回サイファイ・カフェSHE札幌、迫る



第7回サイファイ・カフェSHE札幌を以下のように開催いたします
興味をお持ちの皆様の参加をお待ちしております


日時: 2019年3月23日(土)16:00-18:00
テーマ: 植物の生について考え直す
今回は、最近特に注目を集めている植物という我々の認識の背景に押しやられることが多い生物について考えます。人類の歴史の中で植物はどのように見られてきたのか。その歴史から、われわれの認識をどのように評価するのか。最新の科学の成果やわれわれの観察を通して植物の生に対する新たな見方を模索し、生物が持つ「知性」についても植物を通して見直すところまで行くことができればと考えております。よろしくお願いいたします。
会場: 札幌カフェ 5Fスペース