2017年10月7日土曜日

カズオ・イシグロさんと古代哲学



カズオ・イシグロさんがノーベル賞を受賞したという
数日前のテレビで観たインタビューで、こんなことを言っていたような気がする
人生は短い
そこで重要なことは何なのか
富や権力や名声なのか
愛ではないのか
われわれは真剣に考えなければならない
このテーマは古代哲学に通じる
人間の幸福とは何なのか
生きる意味はどこにあるのか
現代では軽く躱されている
しかし、真面目に考えなければならない問題である
そこに思いが至れば、その方法は哲学しかないだろう

このブログシリーズ(石鹸箱)でもカズオ・イシグロさんは何度か取り上げたことがある
Never Let Me Go の映画を観て議論したセッティングは思いもかけないもので、強い印象を残している
お祝いの意味も込めて、ここに再録したい



2010年8月17日

カズオ・イシグロによるアマチュアリズムとプロフェショナリズム



'...Now we're are all being so frank, I'll be frank too. You gentlemen here, forgive me, but you are just a bunch of naïve dreamers. And if you didn't insist on meddling in large affairs that affect the globe, you would actually be charming. Let's take our good host here. What is he? He is a gentleman. No one here, I trust, would care to disagree. A classic English gentleman. Decent, honest, well-meaning. But his lordship here is an amateur.' He (Mr Lewis, American gentleman: Note by paul-paris) paused at the word and looked around the table. 'He is an amateur and international affairs today are no longer for gentlemen amateurs. The sooner you here in Europe realize that the better. All you decent, well-meaning gentlemen, let me ask you, have you any idea what sort of place the world is becoming all around you? The days when you could act out of your noble instincts are over. Except of course, you here in Europe don't yet seem to know it... You here in Europe need professionals to run your affairs. If you don't realize that soon you're headed for disaster. A toast, gentlemen. Let me make a toast. To professionalism.'

 There was a stunned silence and no one moved. Mr Lewis shrugged, raised his glass to all the company, drank and sat back down. Almost immediately, Lord Darlington stood up.

 'I have no wish,' his lordship said, 'to enter into a quarrel on this our last evening together which we all deserve to enjoy as a happy and triumphant occasion. But it is out of respect for your views, Mr Lewis, that I feel one should not simply cast them to one side as though they were uttered by some soap-box eccentric. Let me say this. What you describe as "amateurism", sir, is what I think most of us here still prefer to call "honour".'

 This brought a loud murmur of assent with several 'hear, hear's' and some applause.

 'What is more, sir,' his lordship went on, 'I believe I have a good idea of what you mean by "professionalism." It appears to mean getting one's way by cheating and manipulating. It appears to mean serving the dictates of greed and advantage rather than those of goodness and the desire to see justice prevail in the world. If that is the "professionalism" you refer to, sir, I don't much care for it and have no wish to acquire it.'

 This was met by the loudest burst of approval yet, followed by warm and sustained applause.


  From The Remains of the Day by Kazuo Ishiguro



 2010年8月18日

この場は石鹸箱? What is a soapbox?



昨日のカズオ・イシグロ作品からの引用に"some soap-box eccentric" という表現があった。初めてなのでウィキをリンクしたが、そこを読んでみると興味深い事実が浮かび上がってくる。

日本で言えばみかん箱に当りそうな石鹸箱。その上に立って自らの主張を道行く人に訴える景色が見えてくる。歴史的に見ると、1872年からロンドンはハイド・パークのスピーカーズ・コーナーに人が集まり、政治や宗教などについて演説、討論していた。そこから、このような演説をする人をsoapbox(石鹸箱)と呼ぶようになったようだ。特に興味深かったのは、現代におけるsoapboxはブログであると指摘していることだろうか。その場を通りかかる不特定多数の人に向けて、自らの主張を比較的自由に発信しているブロガーは現代の石鹸箱になる。




mardi 8 octobre 2013 

共生に始まり、"Never Let Me Go" で終わった4日目
 


潮の満ち干がよく分かるようになってきた
朝の内は満ちているが、お昼には干上がり、それが夕方になると再び満ちてくる
毎日、忠実にこれを繰り返している
実に不思議である

午前中のセッションは普通の発表の他に、海洋生物研の研究者が最先端の話を発表していた
これは最初プログラムになかったものである
最近注目を集めるようになっている共生がテーマで、非常に面白い話であった




午前中のセッションが終わり、ホテルに向かう途中の景色は朝とは打って変わり、この通りである
陸に打ち上げられた船のように見える


Ms. Julia Weiss(Mainz)


今日は発表だけではなく映像も担当しているマインツの医学生ユリアさんと一緒にホテルに向かった
彼女は交換留学でパリの高等師範にも半期いたようで、英語はもちろん、フランス語も流暢である
ビデオも撮れる立派なカメラで、要所を映像に収めていた
いずれ研究所のHPに載せる予定とのこと
ご自身のサイトはこちらになる




午後はロスコフ沖合にある島 L'Ile de Batz にフェリーで向かった
日差しが強く、日よけをしなければ眩しかった
20分程度で着いたのではないだろうか
この時はまだ桟橋が先まで見えている




わたしは疲れが溜まっていたので、1時間半ほど桟橋に面したこのカフェでゆっくりすることにした
ご主人も、中の造りもなかなか感じが良かった
そう言えば、オーガナイザーのアクセルさんは疲労が一気に出たのか、この観光をキャンセル
オーガナイズだけではなく、議論にも積極的に参加されていたので無理もないのかもしれない




帰りのフェリーは6時半
この時には、先ほどの桟橋がほぼ完全に水の下になっている
見ていると、静かに静かに水がこちらに向かってきた
一瞬のことだったが、津波という言葉が浮かんできた

さらに不思議だったことがある
ロスコフの桟橋からホテルに向かう途中、わたしの横で車が止まりドアが開いたことだ
二日続けて研究所の院生がホテルまで送ってくれることになった
まさに、二度あることは三度である
その状況を後ろから見ていたポーランドのマルチンさん
実に不思議な感じがした、とディネの時に語ってくれた
一体どうなっているのか、想像ができなかったからだろう

ディネでは、マインツ側の責任者パウルさんが同じテーブルにいた
ドイツでは兵役は義務付けられているようで、ご本人も15カ月間軍でトレーニングを受けたという
そこから日本の話になった
未だに多数の米軍基地が国内にあり、その費用も負担しているということを知り、皆さん驚いていた
パウルさんによると、ドイツはすべてを縮小することにしているという


Dr. Axel C. Hüntelmann、Pr. Norbert Paul


今日の最後のセッションは、カズオ・イシグロ原作の Never let me go映画を鑑賞
倫理を専門にする人は、必見とされる映画になっているようだ
上映が9時過ぎから始まり、ディスカッションが終わったのは0時であった
原作が2005年、映画が2010年になるので、すでに多くの論評が出ていることだろう
気になっていた映画をロスコフで観ることになろうとは想像もしていなかった
いろいろなことを考える時間となった




映画の中に、ロスコフで見た景色と重なるシーンがいくつかあった



dimanche 1 mars 2015 

カズオ・イシグロさんが考える小説家 



作家のカズオ・イシグロ(1954‐ )氏が10年振りに新作を出すという
The Buried Giant (March 3, 2015)
これまでは個人の記憶を扱ってきたが、今回の作品は社会の記憶についての物語らしい
彼は、年80ページのペースで書いていた
それを奥さんが読み、こう言ったという
「これじゃ全くダメ、最初から書き直さなきゃ駄目」

それは特定の場面のことではなく、 全体の語り口や登場人物同士の会話が駄目ということだった
随分ときつい言葉だったが、仕方がない
暫くの間エネルギーを補給して、ゼロから書き直した作品だという
最初からやり直さなければならなくなったところが最近のわたしと重なり、なぜか嬉しくなる

イシグロ氏が小説家のピークは30-40代だと考えていることは知っていた
今回、このことについて、こんなことを語っている

    小説家は子供時代に近いことが非常に重要だ
    なぜならば、そこから成年になる過程が小説を書くという営みにとって欠かせないから
    子供時代から離れることは、何かを失うことなのである
    30代は良いかもしれないが、60歳の人間がそう考えるのは少々気が滅入ることである





0 件のコメント:

コメントを投稿