2022年2月19日土曜日

ハイデッガーの形而上学(12)



























ロゴスの2つの意味


真理の最初の意味――広がっている存在=ピュシスが明らかにされること――を忘れないようにしよう

ここでピュシスの意味をさらに明快に把握することにしよう

この言葉の基本的な意味の歴史を探索し、『メタ・タ・ピュシカ』というタイトルにある「ピュシカ」が意味するところを理解することにしたい

α)第1の意味

ピュシスの基本的な意味は、最初から表れているわけではないが、それ自体で相反する

広がっているものとしてのピュシスは、それ自身が広がっているものだけではなく、広がっているものが何であれ広がっていることを意味している

蒼穹、星、大洋、地球は、常に人間を脅かすと同時に守っている

この人間を脅すと同時に維持する中で、人間の助けを借りずに自発的に広がっているものである

ここではピュシス(自然)が狭い意味で理解されているが、現代の自然科学における自然の概念よりもさらに広いものである

ピュシスは、自発的に常に形作り消えていくもので、人間が造るものとは異なっている

ヘラクレイトスは我々にこう語っている
「このコスモスはすべてを通して常に同じで、神も人間もそれを創造したのではない。そうではなく、このピュシスは常に在ったし、現在も常に在り、これからも消えることのない炎であるだろう。尺度に合わせて燃え上がり消えたりしながら」


α)第2の意味

ピュシスは存在の1つの領域の意味ではなく、存在するものの性質(nature)を意味している

ここに来て、自然には最奥の本質の意味が出てくる

自然のものの性質ではなく、ありとあらゆる存在の性質を意味するのである

我々は、魂や芸術作品や事物の性質(nature)という言い方をする

ピュシスには所謂自然ではなく、本質、すなわちものの内的法則という意味がある

決定的なことは、2つの概念の一方が他方を抑制するというのではなく、両方が共存していることである

ここで古代哲学が2つの基本的な意味を明確にするに至った歴史的解析をすることはできない

ただ、ピュシスの2つの概念が発展するためには数世紀が必要であったことは言っておきたい

それは哲学する情熱を持った人の場合であった

我々のような野蛮人は、このようなことは一夜にして起きたと考えるのである



 



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