2022年8月13日土曜日

ゲーテの言葉から(40)





























Thomas Carlyle (1791-1881)




1827.5.4(金)

アンペール(1800-1864)はむろんじつに教養が高いから、多くのフランス人の持つ民族的な先入見や危惧や偏見からは、とっくに無縁になっている。だから、彼は、その精神よりみると、パリ市民というよりは、むしろ世界市民なのだ。要するに私の見るところでは、彼と同じ考えの人が何千人とフランスに生まれる時代が到来しつつあるのだ」



1827.5.6(日)

「とにかくドイツ人というのは、奇妙な人間だ!――彼らはどんなものにも深遠な思想や理念を探しもとめ、それをいたるところにもちこんでは、そのおかげで人生を不当に重苦しいものにしている。――さあ、もういいかげんに勇を奮って、いろんな印象に熱中してみたらどうかね。手放しで楽しんだり、感激したり、奮起させられたり、また教えに耳を傾けたり、何か偉大なものへ情熱を燃やして、勇気づけられたらどうかね。しかし、抽象的な思想や理念でないと一切が空しい、などと思いこんでしまってはいけないのだ!」


文学作品は測り難ければ測り難いほど、知性で理解できなければ理解できないほどそれだけすぐれた作品になるということだ」


「それはそうとして、ウォルター・スコット(1771-1832)がカーライル(1795-1881)について一言も書いていないのは、腑に落ちないな。カーライルといえば、ドイツのことに関してはっきりした見解を持っているのだから、スコットが彼を知らないはずはないよ」

「カーライルは、われわれドイツの作家を批評するばあいに、とくに精神的、道徳的核心を重視して、それを実際に有効なものとして見做している。その点が、彼の驚歎に値するところだ。カーライルは、道徳的な力の持主で、そこに大きな意味がある。彼には、多くの未来がある。彼がなにを成し遂げ、どんな影響を残すかは、まったく予断を許さない」



(山下肇訳)













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