2022年9月2日金曜日

コリングウッドによるヨーロッパにおける自然観の変遷





























Bernardino Telesio (1509–1588)




コリングウッド1889-1943)によれば、ヨーロッパ思想史における宇宙論的思考には3つの発展段階があったという

第1はギリシアの自然観、第2はルネサンスの自然観で、第3が現代の自然観である

これから、それぞれについての分析を聞くことにしたい


まず、ギリシアの自然科学の原理は、自然には精神が浸透しているというものであった

自然は運動する物体の世界で、運動そのものは生気、魂によるが、それと運動の規則性は別物だと考えていた

自然は運動の世界だが、そこには規則性があり、それゆえ、叡智の世界であり、「精神」を持った理性的動物と見ていた


第2段階は、16・17世紀に起こった

これをコリングウッドは、「ルネサンスの自然観」と言っている

コペルニクス(1673-1543)、テレジオ(1509-1588)、ブルーノ(1548-1600)らは、ギリシア以来の自然が有機体であるという考えを否定

自然には叡智も生命も欠いているとした

つまり、自然が自ら理性的に運動することは不可能で、その規則性は外から強制された「自然法則」によると考えた

自然は有機体ではなく、機械になったのである

ルネサンスの思想家も規則性のある自然の中に叡智の表現は見ていたが、それは自然の外に在る創造主の叡智であった

16世紀からの産業革命により夥しい種類の機械が日常に入り、自然を機械として理解しやすくなったのである


第3段階は現代の自然観になる

ギリシアの自然学は大宇宙としての自然と、小宇宙としての人間とのアナロジーによっていた

ルネサンスの自然学は「神」の手仕事としての自然と、人間の手仕事としての機械とのアナロジーによっていた

そして現代の自然観だが、それは科学者が研究する自然界の過程と、歴史家が研究する人間の成せる業の変遷とのアナロジーによっている

コリングウッドは、歴史研究が「過程」「変化」「発展」という概念を根本的範疇として親しまれるようになって初めて、現代の自然観が生まれたと見ている

これらの歴史書(例えば、ヴォルテール『ルイ14世の世紀』)は18世紀中頃に刊行、その後半世紀で「進歩」という概念が生まれ、さらに半世紀後には「進化」という概念に至った

それまでは、絶え間ない動きの中にある自然は科学では捉えられないが、その背後にある「法則」という不変なものは科学の対象になると考えられた

しかし19世紀に入り、歴史学は変化し続ける人間の世界を考察することができるようになり、その背後の不変の法則も存在しないとされるようになった

このようにして、科学も変化する自然を対象として扱うことができ、「変化」や「過程」という歴史的概念が「進化」という名の下に、自然界に対しても適用されたという

個人的には、この結論に至る論理の繋がりがまだ見えていないのだが、後に詳しく論じられるものと期待している













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