第4回サイファイ・フォーラムFPSSが今週の土曜に迫ってきた
今回議論するテーマは、目的論と発生工学の技術にまつわる問題についてである
以下にその要旨を紹介したい
(1)伊藤明子: 目的論の有用性と実在性について
アリストテレスが唱える事物の生成変化の四原因の一つである「目的因」は、近代科学の幕開けとともに否定され、ダーウィンの登場に至っては、科学からはもとより、哲学からも完全に駆逐されたと一般には捉えられています。しかしその間、カントは有機体の考察にあたってアリストテレスに遡る「目的論」という概念を敢えて採用し、「目的因」を復活させました。本発表では科学哲学の論文や分子生物学者の試論を参照しながら、目的論の今日における「有用性」と「実在性」について検討していきます。これは、発表者が現在取り組んでいるカントの『判断力批判』について考察した「有機体論の新たな解釈の可能性について」の研究の一部です。特に科学研究者からの忌憚のないご意見を頂戴できれば幸いです。
(2)岩倉洋一郎: 発生工学技術の進歩と人間存在について
近年の発生工学技術の進歩は目覚ましく、胚や体細胞から多分化能を持つ全能性の幹細胞を作り出し、これを子宮に戻してコピーを作り出す手段を獲得した。また、これらの全能性幹細胞、あるいは胚の遺伝子を操作することにより、これらの遺伝形質を改変した個体を作出する技術も手に入れた。したがって、今や我々は従来我々の固有の遺伝形質と考えてきた種々の表現型、つまり、容貌や身体能力、知的能力、病気に対する感受性などを自由に改変できる可能性を持つことになった。このことは、我々にそのような技術の利用をどこまで許すのかという倫理的な問いと同時に、人とは何か、生物とは何かという根源的な問いかけを投げかけることになった。発生工学技術の紹介をしながら、みなさんと一緒にこうした問題について考えてみたい。
日時: 2018年11月17日(土)13:40~16:30
会場: 日仏会館5階 509会議室
よろしくお願いいたします
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