2018年11月17日土曜日

第4回サイファイ・フォーラムFPSS、無事終わる



今日の午後、日仏会館において第4回のサイファイ・フォーラムFPSSを開催した
今回は日程が合わない方が多く、直前で都合が悪くなった方もおられたが、7名の参加をいただいた
また、最初の演題募集では希望者がいなかったが、再募集で2名の方が応募された
その伊藤明子、岩倉洋一郎両氏に発表をお願いした

前回より発表時間と討論時間を長く取り、それぞれ25分、45分に設定した
それでも何とか時間内に収めることができたという感じであった
皆様のご協力に感謝したい
以下に、わたしの視点から見た簡単なまとめを記しておきたい
発表の詳細は近いうちに専用サイトにまとめる予定である


伊藤氏のテーマは目的論で、カントの有機体論との絡みで分析を進められていた
アリストテレスの4原因説では、質料因、形相因、作用因、目的因が設定されている
この見方は長い間定説として機能していたが、現代科学では目的因が排除されている
何のために?という問いは、それを決めている何かを想定しなければならないからだろうか
現代の生物学者は、なぜ?という問いを発しない
目的論を相手にしないところがある

ここでは、この問題に対するわたしの捉え方について、簡単に触れておきたい
目的論というものは、一つの考え方として確かに存在している
現代生物学がそれを排除したとはいえ、元は共にあったものである
であれば、それがどういうものなのかを知ろうとする態度を採る
その上で、科学における目的論の位置を改めて検討することになるだろう

現代生物学の外にあるとされる目的論
しかし、このような問題も科学の中にあるものとして捉え直す必要があるのではないだろうか
それは、科学に関する教養と言ってもよいものである
科学を取り巻く問題についても考えてみるという態度が、これからは欠かせないだろう


岩倉氏のテーマは、発生工学技術の進歩とそれが齎す問題についてであった
最初に発生工学技術の実際と発展の歴史について概説された
その後、ご自身の研究の進展過程で生まれた疑問について提示された

生殖系遺伝子の改変技術には、いくつかの問題が内在している
例えば、技術自体の不安定性や不確実性、遺伝子改変による発がん性や想定外の副作用など
しかし、これらの問題はいずれ解決されると見ていた

解決が難しい問題として残るのは、倫理に関わるものである
例えば、そもそも遺伝子操作はすべきものなのか、そうでないのか、善か悪かという問題
これは単に病気の治療だけではなく、健康な人の能力増強のための遺伝子操作も含まれる
これらの問いに答えるためには、人間や生命についての価値観の共有が不可欠である
しかし、それをどのようにして達成するのか
さらに、原子力、人工知能、遺伝子操作の研究の進展を我々は制御できるのか、すべきなのか
あるいは、制御という問題をどのように考えるのか

これらの問題はまだ解決されておらず、今まさに哲学的思考が求められる時に来ている
哲学の側は科学をより学び、科学の側も科学を取り巻く哲学的な問題に目を開く必要がある
このような相互作用が必要になると結論されていた


二つの発表から見えてきたことがある
それは、科学だけでは処理しきれない科学の現場を超えた問題が浮かび上がっていること
今回の場合は、目的論という哲学的な問題であり、科学技術を扱う際の倫理的な問題である
これらの問題は、科学だけではなく、哲学や倫理の知も動員しなければその輪郭が見えてこない
ましてや解決など覚束ない
このような問題が次々に現れるのが現代の状況ではないかという印象を強くした
その意味でも、知に関わる人たちは広い構えを持った内的空間を準備しておく必要があるだろう





0 件のコメント:

コメントを投稿