2020年1月18日土曜日

現代哲学とは




ロレーヌ大学のロジェール・プイヴェPhilosophie contemporaine (2008, 2018)を手に取った
哲学の教科書は好きではないが、著者の個人的な経験や見方が織り込まれていたからだろうか
少し目を通してみることにした
ここで、イントロに書かれてあることを簡単に纏めておきたい
まず、哲学とは何であり、どのようにするものなのかということについて触れている
結論は予想される通り、誰もが同意する考え方はない

いくつかの例を挙げている
一人の学生が、問題について省察し、自分自身が何が真であるのかを発見することが哲学だと言う
それに対して、哲学はプラトン、デカルト、カントのテクストの中にあると教師が答える
しかし、他の教師はフーコーやデリダの著作が重要だと言う
さらに、フッサールだと言う教師、ドイツ解釈学を挙げる教師もいるという具合できりがない
このような状況は哲学を学ぶ人を混乱させ、時に失望させる
鬱蒼とした哲学の森で迷子にならないためのサバイバルキットとして本書を執筆したようである

それでは、現代哲学とは何を言うのか
一つは、それがいつ生まれたのかという時代的な問題になるが、決めるのが難しい
ある人はフッサールの『論理学研究』(1900-1901)を挙げ、別の人はウィーン学団の結成だと言う
またある人はニーチェの『道徳の系譜』(1887)から現代哲学が始まったと言う
プイヴェ氏はポーランドの哲学者カジミェシュ・トヴァルドフスキのルヴィウ大学での開講講演だと言う
現在のウクライナにある大学における無名の哲学者の講義を挙げている
あるいは、フライブルク大学でのハイデッガーの講演を挙げる人もいるだろう
要するに、人によって変わるのである

もう一つの基準は、時代を画した作品、新しい潮流を生み出した作品は何かという点である
現代に属していても時代遅れの哲学者はいる
プイヴェ氏ご自身は、過去との断絶は大きな要素ではないと考えている
哲学は時代とともに変わらないものを扱うもので、時代について意味を与えるものとは見ていない
その上で現代哲学の特徴を挙げるとすれば、大衆化しているということ
それまでのように一握りの専門家のものではなく、本や雑誌、セミナー、カフェなどが世に溢れている

本書が目指したのは百科全書的なものではなく、読者の研究や省察に寄り添うものであること
今、哲学をやる際の最良の方法を探るものを目指したという
著者によればフランスの哲学教育がローカルなものになっているので、国際的視点を取り入れた
20世紀から21世紀にかけての哲学のメタ哲学を目指したと言っている

そして次のように問い、哲学の存在意義を確認する
現代哲学は過去の哲学の模倣をしているだけではないのか
純粋科学が哲学を置換してしまったのではないのか
哲学は消滅しようとしているのか、あるいはすでに消えてしまったのではないか

それに対して、科学や技術にはできないことがあり、そこに哲学が関わる余地があると考えている
精神を開き、広くて深いものの見方を提供するのが、技術社会における哲学の力だと言っている
ウィルフリド・セラーズが言うように、哲学は「もの・こと」を全体として見ること
そのために、それぞれがどのように関係しているのかをできるだけ広く理解することである
換言すれば、それは形而上学ということになる
過小評価され、時に排除された形而上学だが、哲学の核心にはこれがあり、消えることはないと見ている


ここまでの捉え方は、わたしの中に出来上がってきたものと殆ど重なっている





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