2022年7月17日日曜日

ヘルベルト・ブロムシュテットという音楽家





























Herbert Blomstedt  ⒸHesekiel




今日は朝から雨模様

アトリエに行くのを止め、暫く雨音を聴いていた

午後、手持ち無沙汰になったのでテレビのスイッチを入れる

すると、何とものどかな田園風景が出ていて、足元が覚束ない老人の後ろ姿が映し出されていた

少しして、指揮者のブロムシュテット(1927- )の特集であると分かった

御年95の最長老と言ってもよい指揮者である

これまでドイツ人だと思っていたが、スウェーデンのご出身

スウェーデンは長い間離れていたが、僅かな時間でもそこに戻ると心から寛げるという



湖のほとりで、こんなことを言っているのを聞き、この方の内的生活の一端を見たように思った

それは、「スコアはイデアの世界、景色は現実の世界」というもの

"meditieren"(瞑想する)という言葉も聞こえてきたので、自らに向き合う時間を意識して取られていることを想像させる

おそらくそれ故、内面が静寂の中にある

ルツェルンの書斎でスコアを研究している様子を眺めていると、どういう生活がそれを生み出しているのかが見えてくる

それは日常から離れて音楽に浸りきるという哲学的生活と言ってもよいものだろう

その空間から、そしてそこにある存在の中心から我々に語り掛けているのが分かるのである

ただ、こんなことも言っていた

いつも自分と向き合っていると病気になる

人間は自分のことだけを考えては生きていけない



今は人生のすべてを振り返りながら音楽に向き合い、勉強し直しているように見える

昔はスコア第一だったが、最近はその演奏家がどういう人間なのかに興味が出てきたという

年を取るとともに、他者を共に感じる(感じたいと思う)ようになってきたが、この感傷はやはり老化現象なのだろうかとも言っていた

メンデルスゾーン(1809-1847)の「音楽家に必要なことは、他者の偉大さを認めることだ」という言葉もよく入ってきた



今回初めて、ブロムシュテットさんの内面を知ることになった

ブロムシュテットさんが言葉を大切にしていることの証なのだろうが、わたしの胸に届く言葉に溢れた番組であった

おそらく、それ故、幸福な時間となった

雨音はまだ聞こえている









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