2019年2月28日木曜日

長い道のり



先日送った最終チェックしたものが検討され、校了になったとの連絡が入った
長い道のりであったが、最初の本に比べると短かった
しかし、前回触れたように容易だったということではない
今は出来上がりを待つだけとなった

ということで、今週から中断していたプロジェに当たることができるようになった
翻訳で培われた?忍耐力と持続力を生かして進めることになるだろう
まず、これまでに書いたものを読み直すところから始めている
こちらも長い道のりが始まったことを感じる







2019年2月25日月曜日

翻訳考



この1週間当たっていた訳書の最終見直しが終わり、わたしの手を離れた
これで俎板の鯉になったと言えるだろう
これまで、翻訳という仕事が想像以上にdemandingなものであることを痛感し続けてきた
根気と忍耐力が求められるだけではなく、意識もそちらに向かってしまうからだ
その間、気が抜けないのである

また、1冊の本をこれだけ注意して読むことはないことにも気付く
そのため、訳者にとっては内容がよく頭に入ってくるという利点はある
少し離れて見れば、フランス文化のある部分に窓を開くことにもなる
しかも、それは訳者の日本語によって行われるのである
同じ作品でも訳者によって全く異なる世界が展開されることになるだろう
そこに何か責任のようなものを感じる理由がありそうだ
翻訳に携わって実感できるようになったのは、これらのことである

予定通り進めば、3月下旬の刊行になる『これからの微生物学』
目に見えない世界が動物や植物、さらには環境との関係のなかで描かれている
我々の世界、我々の生について考える際の資料としても貴重なものになるはずである
興味をお持ちの方には実際に手に取ってお読みいただければ幸いです







2019年2月21日木曜日

『これからの微生物学』の校正、大詰めを迎える



今回は日本到着以来、これまでのように時差ボケ調整などといってぼんやりすることがない
翌日からトゥールと変わらない精神状態になっている
体は下り坂ではないかと思うのだが、(いつものことだが)主観的には問題がない

現在、3月に出る予定の訳書『これからの微生物学』の三校(最終校)の見直しをやっている
前回もそうだったが、ここまで来てもまだ修正点が見つかる
間違いは最小限にすべくやっているが、そこは人間業、どこまで実現できるだろうか


トゥールの天候を見ると、連日10度を超え、快晴となっている
春に向かっているようだ







2019年2月17日日曜日

無事に日本到着



昨日、無事に日本に着いた
もうずっと以前からここにいるような感覚になっている
これはフランスを主にしている時にはなかった感覚だ
昔は帰ってきたーぁという感じがあると同時に、どこか外国を見る目で観察していた
今ではそれが消え、どちらに行ってもこれまで通りというやや味気ないことになっている

このように気分の揺れがない状態は、何かをやる上ではよさそうに見える
ただ、目に触れる世界は変わっているので、それがどのような影響を与えるのか
本当によいことなのか、何か面白い影響が出るのか、これから様子を見ることになる






2019年2月15日金曜日

ENSでのセミナーを終える



サンジェルマン通りに面したホテルのバルコンから朝焼けの空を見る
すでに飛行機雲に乱された見慣れたパリの空だ
何度も通ったところだが、このホテルがあることには気付かなかった
自分には関係がないと思っていたのだろう

今日は午後からENSカヴァイエス・センターでのセミナーに招かれた
免疫と認識について最近考えていることについて話をした
1時間の発表に続き、1時間のディスカッションということで哲学では普通の流れであった

写真でも伺われるが、そこで感じるのは思考の自由だ
誰にも気にすることなく、わたしにとって参考になる多くの質問、助言が続いた
数学の領域の方からの質問に答えるのは大変であった
自分の知っていることは他の人も知っているという前提で話しているためだろう
いくつかの言葉を独自の意味で使っているのにその説明がないという状態であった

それについてはフォローしてくれる若手がいて、後で論文を送ってくれるとのこと
彼はスペイン出身で、現在はスイスをベースにし、パリにも顔を出している
今年の夏、日本で開かれる分析哲学の会で発表する予定で、今日本語を勉強中
セミナー後には、フランス語、英語、スペイン語、イタリア語が飛び交っていた
他にも日本語を披露してくれる若手がいた

これから考えなければならない宿題をふんだんにいただいた充実の2時間であった
これだけで今年はもつのではないかという感じさえする
このように精神が昂る経験は久しぶりである





今回もいつものように寸前まで準備に追われていた
最近では、最後の最後にならなければ事に当たることができないという習性が分かってきた
そのため、以前には感じていたフラストレーションがなくなった
どうしてもっと前から始めなかったのかという気持ちが消えたのである
こういうものだと思って当たるしかないと諦めたのだろう
最後にどんな状況が待っていようとも受け入れることができるようになったとも言える
今回も終わりよければ、ということで纏めることにしたい

ENSに向かう途中パンテオン周辺を歩いたが、マスター時代を思い出させる時間となった
ただそこに、ノスタルジックな気分はなかった
その昔よく入ったカフェで一休みしてから会場に向かった







2019年2月11日月曜日

ハイテーブルディナーでの話題から



トゥールは朝方は雨模様だったが、午後から太陽が顔を出してくれた
向かいのグラウンドからは元気のよい声が聞こえてくる
旅から帰り落ち着いてみると、直近のために隠れていたケンブリッジでの記憶が蘇ってきた

ディナーで私の向かいになった物理学者が、世界共通語に関して興味深いことを言っていた
第二次大戦後、自国の言葉を世界共通語にしようとしていた国があるというのだ
それがドイツとフランスだという
17-8世紀であればフランス語は共通語に近いものがあっただろう
その夢よもう一度ということだったのだろうか
特に驚いたのは、あれだけの敗戦を喫したドイツもそう考えていたことである
聞き間違いかと思い確かめたが、そうだという

国も我々と同じ有機体だとすれば、そこには意志が生まれる
最近の疑問として、国の意志というようなものが一体どこから出てくるのかということがある
それがどこでどのように決められたのかも知らず、多くの人はその枠の中で踊ることになる
その恐ろしさには目もくれず、ひたすら歩むことになる


デザート・ワインの会では、オスロで運動生理学を研究している方が隣りになった
デンマーク生まれでノルウェーに移住したが、まだ国籍は取っていないようだ
1月から半年の予定とのことだが、すでに最高の時間を過ごしているという
日常の仕事に追われているオスロを離れ、静かな環境で自由に思索し行動できるからだろう

最新の拙エッセイでは、日常性の中に精神性を如何に取り込むかという問題について触れた
私の場合、日仏の移動によって務めることなくそれが可能になっていると感じている
彼は、二つの生活を持つことの重要性を当然のことのように話していた
そして、現代では精神生活を充実させることが難しくなっていると感じていた










2019年2月9日土曜日

心和む朝のひと時



雨のケンブリッジを後にして、セント・パンクラス駅へ
ピアノが2台置かれていて、そのうちの一つが以下のような状態であった
数曲聞いてパリ行のターミナルに向かわなければならなかったが、まだ弾き続けていた
なぜか心和む朝の時間となった
お陰様でそれ以降の旅路も流れるように進み、無事トゥールに戻った










ハイテーブルディナーとフィッツウィリアム美術館を味わう



昨夜はチャーチルカレッジのハイテーブルディナーにゲストとして招かれた
大学のフェローは一定期間に決められた人数をゲストとして招待できるようになっているという
フェローはそれぞれの立場で決められた黒いガウンを着ることになっている
伝統の国イギリスならではだろうか

望めば毎晩でも参加できるようなので、大学人に対する待遇というものを考えさせられる
ディナーでは周りに座った人と会話することになっているようだ
専門外の人と接触する場を提供しているのだろうから、当然のことだろう

上の写真は昨日わたしの前に座った方である
左から数学、物理学、そしてゲストのカナダ人で、UKとのリエゾンの仕事をされている方である
わたしの横には渡邊氏と物理学専攻の若き女性研究者が座る
なかなか元気がよく、応用ではなく基礎的な問題について研究していきたいとのことだった
ということで、普段使っていない脳の部分が活性化されることになった

ディナー終了後、デザートとワインの会が別の場所であり、希望者は参加できる
わたしもどんなところなのか興味があったので参加した
ディナーの時よりおいしいワインが数種類とチーズや果物などが出され、存分に楽しんだ
7時半にディナーが始まり、デザートが終わったのが11時だっただろうか
終わりはその日によって変わってくるようである
いずれにせよ、有意義な時間となった






ところで昨日は午前中から気持ちよく晴れてくれたが、残念ながらWindy & Chilly
その中を歩き回る
以前に来た時よりケンブリッジ駅前は整備されているが、中心街はそれほど変わっていない
変っていないと地元の人に言うと喜ばれる

来る時の車内からケンブリッジ大学出版局が見えたので、まずそこの様子を見ることにした
駅から近いかと思ったが予想は外れ、しかもそこに至るために計7人に尋ねることに
その中の一人は、この町では20分程度の歩きは何でもないと言っていた
目的地は静かな環境の中にある普通のビル


それから中心部に向かうと、以前に来た時に入った書店が現れた
トリニティ1番地にある、こちらもケンブリッジ大学出版局の書店である
哲学セクションに行くと、しばらく見ていなかった英語から見る哲学世界が出現
完全に時間が消える中、いろいろなものを読む
振り返れば、2時間くらいだったのではないだろうか
結局2冊を手に入れ、4-5冊気になるものがあったので後程検討することにした

そこを出て、前日渡邊氏に勧められたフィッツウィリアム美術館に向かう
陶器類が結構豊富にあったが、陶器はあまり感じないので通り過ぎ、古代の彫刻の部屋へ
エジプト、ギリシア、ローマなどの石の中から現れる表情に豊穣の時を過ごす











2019年2月8日金曜日

ケンブリッジで旧交を温める



昨夜は渡邊氏と何年かぶりに旧交を温めた
最初予定していたパブは客が多く騒々しいため話ができそうもなかったので、別のところへ
近くに静かなレストランが見つかり、そこに落ち着いた

イギリスやケンブリッジのお話を伺う
仕事には毎日出ているとのことで感心する
残りが二か月程なので、週末には精力的にイギリス国内やヨーロッパを回られているようだ
充実した生活ぶりが窺われた
春には無事に帰国されることを願うばかりである

今夜はフェローのためのハイテーブルディナーがあり、ゲストとしてわたしも招かれた
その様子は明日改めて書くことにしたい




2019年2月7日木曜日

ロンドン到着



今日は午後からユーロスターでロンドンのセント・パンクラス駅まで
1時間の時差があり、2時間半の旅となった
今回の旅は半年の予定でケンブリッジに来ている退職同期の渡邊氏からのお誘いのため
これからケンブリッジ行に乗って1時間、夕方には目的地に着く予定だ

今回、ロンドン行がリール経由であることを確認して、少しだけ驚いた
何となく直線的に北に向かっていると思ったからだろう
同様の錯覚がこちらに来てから長い間あった
それは、イギリスが非常に遠いところにある国というものである
フランスに身を置いているにもかかわらず、頭の中はまだ日本にいるように感じていたからだろう

ケンブリッジにはこれまで学会や共同研究で何度か来ている
フランスに来てからも2009年にダーウィン祭がここであり、参加している

  ダーウィン生誕200年祭 “Darwin 2009” で21世紀の科学を想う(2009年7月14日)

今回は短い滞在だが、どんなことになるだろうか






2019年2月3日日曜日

第5回ベルクソン・カフェのご案内



第5回ベルクソン・カフェを以下の要領で開催いたします

2回シリーズ
① 2019年5月21日(火)18:00~21:00
② 2019年5月28日(火)18:00~21:00
1回だけの参加でも問題ありません

テクスト:Pierre Hadot  « Apprendre à lire »(ピエール・アドー「読むことを学ぶ」)
Exercices spirituels et philosophie antique (Albin Michel, 2002) pp. 60-74

申込みをされた方には予めテクストをお送りいたします

会場:恵比寿カルフール B会議室

サイト  ポスター

興味をお持ちの方の参加をお待ちしております






2019年2月2日土曜日

春のSHEとPAWLのご案内



今年前期のサイファイ研ISHEの活動から、4月までのものについてご案内いたします
詳細は各サイト、ポスターをご覧ください

● 第8回カフェフィロPAWL
  日時: 2019年4月17日(水)18:30 ~ 20:30
  テーマ: プロティノスの哲学から見える生き方
  会場: 恵比寿カルフール B会議室
  サイト ポスター

● 第14回サイファイ・カフェSHE
  日時: 2019年4月12日(金)18:30 ~ 20:30
  テーマ:「技術」(テクネ-)から現代を考える
  会場: 恵比寿カルフール B会議室
  サイト ポスター

● 第7回サイファイ・カフェSHE札幌
  日時: 2019年3月23日(土)16:00 ~ 18:00
  テーマ: 植物の生について考え直す
  場所: 札幌カフェ 5F スペース
  サイト ポスター

興味をお持ちの方の参加をお待ちしております







2019年2月1日金曜日

御本家のサイトを作る



サイファイ研ISHEの基になるサイファイ・カフェSHEを始めたのは、2011年11月であった
振り返れば、第4回までは「科学から人間を考える試み」という名前の下にやっていた
2013年にサイファイ研究所ができたのを切っ掛けに今の名前に変えた
それ以降に新しい活動が増えると、それらについては独自のサイトを作った
しかし、御本家のサイトは長い間サイファイ研究所のサイトに埋もれる形になっていた

昨日そのことに気付き、なぜか申し訳なくなり独自のサイトを作ることにした
同様に、同じ名前を持つ「サイファイ・カフェSHE札幌」についてもサイトを作った
これで少しすっきりした
新しい気持ちで、向き合えそうである
それぞれのカフェも解き放たれた気持ちでいるのではないだろうか

新サイトもよろしくお願いいたします

 ● サイファイ・カフェSHE
 ● サイファイ・カフェSHE札幌



夜、このブログのトップも模様替えしたくなり、作ってみた
印象が大分変わったようである