2019年11月14日木曜日

「丸山健二さん トークイベント」に顔を出す



今日は神保町界隈で時を過ごす
夜、作家の丸山健二さんがトークイベントをやるというので、お話を聴くことにした
東京堂書店の6階ホールが会場であった

タイトルは本人のご指名で、最近作の題と同じ「人の世界」
現在75歳で、過去50数年第一線でやってきたが、このような例は少ないと言っていた
よく出ていたのは、現在の出版界の厳しいお話だった
新作は書いているが、出す出版社がないという
昔はマンガなどで儲けた分で文学を出すところもあったが、今はないようだ

丸山氏によれば、文章そのものを冷徹に見ると、日本文学の主流は幼稚で自己愛に溢れている
人の世界の生々しさから目を逸らしているが、それは本当の文学なのかと言うのだ
夏目漱石が未だに最高峰と言われるが、その後の文学者は一体何をやっていたのか
丸山氏に言わせれば、近代文学を始めた人としてはそれなりだが、漱石も大したものではない
まだまだやるべきことがあるという

日本文学が駄目になったのは、小説を商品として扱うようになったからだとの見立てである
作家と編集者、時に評論家などが相互依存の関係になり、事情で仕事をするようになっているようだ
丸山氏は表現の可能性を求めて、新しい文体を開発するのに5年は費やすという
日本にそんな人はいないと言われたと話していた

自分が会得したものをこれからの人に教えるべく塾を開いているという
1から20までのレベルがあり、芥川賞などは2-2.5程度
ピアノで言えば、「猫踏んじゃった」のレベルとのことで厳しい
氏は15位まで行っていると見ていたが、最近最高レベルは30位ではないかと考えているようだ

昔から作家はその気になってポーズを取ったり、酒を飲んだりしていた
今でもそういうところがあるのだろうか
丸山氏は、本当の文学者は酒ではなく、牛乳を飲まなきゃ駄目だと言っていた
その真意は分かるような気がする
文学にとって重要なのは、自分を見る目、人を見る目、正確に生々しい姿を見る目だという

最後に会場から、海外の作家では誰を評価しているのかという質問があった
それに対して、ホフマンスタールの『騎兵の物語』は凄いが、『影のない女』はいただけないとのこと
それから、マルグリット・デュラスの作品(『夏の雨』??)を挙げていた


わたしはおそらく20歳を境に文学を読まなくなったので、深いところまではよく分からない
しかし、先日の科学の会に比べると、「分かった感」には雲泥の差があった




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