2020年1月19日日曜日

再びの分析哲学と大陸哲学(1)




今朝は晴れ上がり、向かいの芝には霜が降りていた

昨日の続きをもう少しやってみたい
わたしの場合、ある学生が言ったという自分で発見することを重視してきた
鬱蒼とした哲学の森をガイドを手に進むのではなく、気分の赴くまま歩き回るのを好んできた
効率性とは対極のやり方である
このやり方を採用すると自分なりの発見があり、それが無上の喜びとなっている

哲学を分析哲学と大陸哲学に分けて考える見方がある
2013年、前ブログに「思想の重要性、あるいは大陸哲学と分析哲学」と題する記事を書いた
そして2016年には「ドーバー海峡が分けるもの、あるいは分析哲学と大陸哲学」というエッセイを書いている
医学のあゆみ (2016.8.20)258(8): 815-819, 2016
ロジェール・プイヴェ氏の本にもこの二つの哲学について考察しているところがある
必須ではないかもしれないが、現代哲学を考える上で参考になる問題だと考えてのことのようだ
今日はその中からいくつかのポイントを纏めておきたい

プイヴェ氏は、フランスのおける哲学は大陸哲学とほぼ同義になっていると見ている
分析哲学は、1920年代から英米の哲学者が哲学は命題を論理的に解析するものだと考えたところに由来する
一方の大陸哲学は、分析哲学者がそれ以外のやり方をしている流れに対して使ったものだと言われる
二つの流れは必ずしも地理的分布に依存するのではなく、あくまでも方法論の基づくものである
著者がそれぞれに属すると考える哲学者を挙げているので、以下にリストアップしたい

分析哲学

ゴットロープ・フレーゲ(1848-1925;ドイツ)
チャールズ・サンダース・パース(1839-1914;アメリカ)
ウィリアム・ジェームズ(1842-1910;アメリカ)
エトムント・フッサール(1859-1938;オーストリア生まれ、ドイツ)
バートランド・ラッセル(1872-1970;イギリス)
ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン(1889-1951;オーストリア生まれ、イギリス)
ルドルフ・カルナップ(1891-1970;ドイツ)
ウィラード・ヴァン・オーマン・クワイン(1908-2000;アメリカ)
ネルソン・グッドマン(1906-1998;アメリカ)
ピーター・ストローソン (1919-2006;イギリス)
ドナルド・デイヴィドソン(1917-2003;アメリカ)
マイケル・ダメット(1925-2011;イギリス)
デイヴィド・ルイス(1941-2001;アメリカ)
ソール・クリプキ (1940- ;アメリカ)

大陸哲学

アンリ・ベルクソン(1859-1941;フランス)
ウィリアム・ジェームズ(1842-1910;アメリカ)
エトムント・フッサール(1859-1938;オーストリア生まれ、ドイツ)
マルティン・ハイデッガー(1889-1976;ドイツ)
ジャン・ポール・サルトル(1905-1980;フランス)
モーリス・メルロー・ポンティ(1908-1961;フランス)
ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン(1889-1951;オーストリア生まれ、イギリス)
ガストン・バシュラール(1884-1962;フランス)
ジル・ドゥルーズ(1925-1995;フランス)
ハンナ・アーレント(1906-1975;ドイツ生まれ、アメリカ)
エマニュエル・レヴィナス(1906-1995;ロシア生まれ、フランス)
ジャック・デリダ(1930-2004;フランス)
ミシェル・フーコー(1926-1984;フランス)

両方の流れに属している人にジェームズ、フッサール、ヴィトゲンシュタインがいる
興味深かったのは、フッサールとヴィトゲンシュタインの年代による変化である
前期に分析的傾向があり、後期に大陸的傾向が増してきたというが、分かるような気がする

この二つの流れの先駆者的な存在もリストアップされている

分析哲学

ルネ・デカルト(1596-1650;フランス)
ジョン・ロック(1632-1704;イギリス)
ジョージ・バークリー(1685-1753;アイルランド) 
デイヴィッド・ヒューム(1711-1776;スコットランド)
トマス・リード(1710-1796;スコットランド)
イマヌエル・カント(1724-1804;ドイツ)
ベルナルト・ボルツァーノ(1781-1848;チェコ)
ジョン・スチュアート・ミル(1806-1873;イギリス)

大陸哲学

ルネ・デカルト(1596-1650;フランス)
イマヌエル・カント(1724-1804;ドイツ)
ヨハン・ゴットリープ・フィヒテ(1762-1814;ドイツ)
フリードリヒ・シェリング(1775-1854;ドイツ)
ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(1770-1831;ドイツ)
セーレン・キェルケゴール(1813-1855;デンマーク)
カール・マルクス(1818-1883;ドイツ生まれ、イギリス)
フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900;ドイツ)

先駆者の中にも二つの流れに属している人がいる
デカルトとカントである
このような事実は、分析哲学と大陸哲学が実質では違いがないのではないかという疑問を誘発する
これに対して、両者の内容は異なるだけではなく対立するとプイヴェ氏は見ている
その特徴は以下の通り

分析哲学

① 立論を優先する
② 問題提起に対して直接的に迫る
③ 明晰さ、正確さ、綿密さ
④ 論述の字義的表現を重視する
⑤ 哲学に真実性を求める

大陸哲学

① 見方を優先する
② 問題提起に対して婉曲的、歴史的に迫る
③ 視野の深さと広さ、そして全体性
④ メタファーに訴え、文体に力を入れる
⑤ 哲学に解釈性を求める


 このテーマについての考察はまだ続いているので、さらに触れることになるだろう








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