2020年5月12日火曜日

哲学における論理学の役割(10)




フレーゲ、あるいは新しいアリストテレス?(4)

フレーゲはまた、対象と概念の間の識別を提唱した
それは現代哲学における命題解析の基礎にあり、この識別が認められるのか否かということであった
この点から見れば、現在では『哲学論集』に纏められている3つの論文は基本的なものである
それは『関数と概念』、『概念と対象』、『意義と意味』である
同様に重要なのが、3つの『論理的調査』、特に『思想』に関するものである

立言の真理値には、対象である真と偽の2つがあるとフレーゲは主張する
立言はこれら2つに固有の名前である
関数(概念)と対象の識別も、前述した存在論的証明についての考察が示すように、最も重要なものである

概念や関数は飽和状態にはならず、不完全である
それに対して、対象は飽和する
如何なる量化によっても、関数と対象については同時に一般化されない
それは、両者の識別が範疇に関するものであることを意味している

この識別には存在論的意義がある
意味と意義の識別もまた、基本的なものである
「朝の星」と「夕の星」は同じものを外延により示しているが、2つの表現は同じ意味を持っていない

「ピエールは金星が朝の星だと思っている」という文における「朝の星」は「夕の星」では置換できない
表現の意味の認知に関わる理由によって真理値が変わるからである
真理値を変えることなく相互に交換可能な状態(salva veritate)にはならない

これらすべては「命題的態度」や「モダリティ」と呼ばれるものの解析にとって著しい重要性を持っている
命題的態度とは、「を思う」、「を望む」、「を欲する」、「を信じる」など、命題に対する心的態度を言う
これはバートランド・ラッセルに由来する
モダリティは様相性とも言われ、話し手の判断や感じ方を表す言語表現である
例えば、「である必要がある」、「であることが可能である」、「であることが必須である」など

(つづく)








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