2021年6月1日火曜日

ツルゲーネフの言葉から(3)






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日もツルゲーネフを読むことにしたい


人間というものはすべて自分で自分を教育しなくちゃならない。たとえば、ぼくみたいなものさ … 時代ということにしても、なぜ僕が時代に支配されなくてはならないんだい? 時代の方でこそ、僕に支配されるべきだよ。

 

 

ーー君はよく親父を知らないんだよーーとアルカーヂイが言った。

ニコライ・ペトローヴィッチは息をひそめた。

ーー君のお父さんはいい人だーーとバザーロフはひくい声で言ったーーしかしもう時代おくれだ、あの人の役割はすんでしまったよ。

ニコライ・ペトローヴィッチはじっと耳をすました … アルカーヂイはなんとも答えなかった。「時代おくれの人間」は、二分ばかりうごかずに立っていたが、やがてゆっくりと家の方へ帰って行った。

ーーおとといだったかな、あの人はプーシキンを読んでいるんだーーとバザーロフはそのあいだにことばをつづけたーー君、どうか、よく説明してあげろよ、あんなことはなんの役にもたたないって。あの人はもう子供じゃないんだから、もうあんなばかげたものはやめてもいいころだよ。いまどき、ロマンチストでいるなんて、物ずきな話じゃないか! なにか実際的なものを読ませてあげろよ。

ーーなにがいい?ーーとアルカーヂイがたずねた。

ーーそうだな、ビュヒネルの Stoff und Kraft(物質と力)なんか、手はじめにいいだろう。

 

 

むかしはわかい人たちは勉強しなければならなかった。教養のない人間と言われたくなかったので、いやでも勉強したものです。ところが、いまは「世のなかのことはみんなばかげてる!」と言いさえすれば、それで上首尾なのだ。だからわかいものは大喜びです。実際、まえには彼らはただのばか者だったが、いまでは急にニヒリストになってしまった。

 

 (金子幸彦訳)

 

 

 

 

 

 

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