2022年6月24日金曜日

ゲーテの言葉から(10)

































昨日の主観主義だが、わたしの理論に絡めれば、意識の第一層に留まるやり方ということになるだろう

感情面は非常に大事だが、そこに止まっていては駄目だということ

それでは感情の解決にも導かないし、そこからの発展もないだろう

その感情をもとに、第二層、第三層を導入し、それらを参照しながらどこかに開いていくこと

それをゲーテ(1749-1832)は「内面から出発して世界へ向かう」と言ったのではないだろうか

そう考えると、わたしには非常によく理解できる

さて、今日は強い雨音を聴きながら、ゲーテの新しい言葉に触れてみたい


1926.12.11(月)

アレクサンダー・フォン・フンボルト(1769-1859)が、今朝、数時間私のところにいたのだ。なんというすばらしい男だろう。ずっと前から彼を知っているのに、今さらのように驚嘆させられる。知識や生きた知恵の点で、彼に及ぶ者はいないといっても過言ではなかろう。おまけにあの多面性も、あれほどのものにまだお目にかかったことがないね! どんな方面でも、何にでも精通していて、われわれに精神的な財宝を浴びるほど与えてくれる。彼は、たくさんの管をつけた泉のようなもので、どこへ容器を持って行っても、いつもちゃんと、清らかな汲めどもつきない水が流れ出てくる。彼は数日ここに滞在するだろうが、私は、そのあいだ数年も生きてきたみたいな気持になるだろうと、今からもう感じているよ」


1926.12.13(水)

「なにもかも独学で覚えたというのは、ほめるべきこととはいえず、むしろ非難すべきことなのだ。才能ある人が生まれるとすれば、それはしたい放題にさせておいてよい筈はなく、立派な大家について腕をみがいて相当なものになる必要があるからだよ。先日私はモーツァルト(1756-1791)の手紙を読んだが、彼のところへ作曲を送ってきた男爵にあてたもので、文面はこうだったと思う。『あなた方ディレッタントに苦言を申さねばなりますまい。あなた方にはいつも二つの共通点が見られますから。独自の思想をお持ちにならないので、他人の思想を借りて来られるか、独自の思想をお持ちの場合は、使いこなせないか、そのどちらかです』。すばらしいじゃないか? モーツァルトの言ったこの偉大な言葉は、他のあらゆる芸術にも通用するのではなかろうか?」

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)はこういっているよ。『あなた方の息子さんが、自分の描くものをくっきりとした明暗によって浮きあがらせ、見る者が思わず手でつかまえたくなるくらいのセンスをもっていないようでしたら、息子さんには才能はありません』とね。さらに、レオナルド・ダ・ヴィンチは、こうもいっている、『あなた方の息子さんは、遠近法と解剖学を十分に修得してから、りっぱな大家に師事させなさい』と」

「今どきの若い画家連中には、情緒もなければ精神もない。彼らの考えというのは、何も内容がないし、ぜんぜん感動を与えないよ。・・・精神がすっかりこの世から消えてなくなったのではないかと、ときどき情けなくなるよ」


1926.12.20(水)

「両国民ともそれぞれ長所と短所を持っているよ。イギリス人の場合は、すべてを実際的に処理することはうまいが、杓子定規だ。フランス人の場合は、頭がいいが、何ごとも実証的でないと気がすまず、そうでないものまで、そうしてしまう。しかし、色彩論においては、正道を歩んでいて、最もすぐれた者の一人は我々の水準に迫っている」


(山下肇訳)










0 件のコメント:

コメントを投稿