2020年7月7日火曜日
COVID-19、5つの謎
今日は久しぶりに今世紀最悪の危機となっているCOVID-19の現状に当たってみたい
最近、Nature誌で取り上げられた記事を参考にしながら
感染が広まって半年になるが、未だに解決されていない問題が5つあるという
第一は、なぜこのウイルス(SARS-CoV-2)に対する反応が人によって異なるのか、である
イタリアやスペインの4,000人ほどを対象にした国際研究により、重症者に特徴的な遺伝子変異が見つかった
一つは、ABO型を決めている遺伝子領域にある
他には、ウイルスの受容体ACE2をコードする遺伝子、あるいは免疫応答を支配する遺伝子に近接するものがある
ただ、これらは比較的影響が弱いとして、さらに重要な遺伝子を探しているグループもあるようだ
第二は、ウイルスに対する免疫反応がどのようなもので、どれくらい持続するのか、である
ウイルス中和抗体は感染の数週間後に現れるが、それ以降減少する傾向がある
ただ、重症患者ではこの抗体が高いレベルで存在し続ける
SARSの例を見ると、普通の感染者は数年後に中和抗体が消えるが、重症者では12年後でも存在したという
また、どれだけの中和抗体があればよいのか、他の抗体で重要なものはないのかという問題もある
さらに、T細胞はどのような役割を担っているのか
まだ、このウイルスに対する免疫の全体像は見えていない
第三に、このウイルスは毒性を増すような変異を起こすのか、がある
これに関しては、いまのところ重大な変異は起こっていないようである
ウイルスは武漢から出たが、2月くらいから見られたヨーロッパのウイルスはそれが変異したものである
培養細胞に対する感染性はヨーロッパのものが高いようだが、人間に対する影響は分かっていない
第四は、パンデミックを終わらせる可能性があるワクチンはどれだけ有効なのか、という問題である
世界的に見ると、200ほどのワクチンが開発中で、その内約20の臨床試験が行われている
サルを使った実験では、肺の感染は抑えるが、鼻では対照群と同じくらいのウイルスが見られたという
人でも同様だとすれば、重症化は抑えられるが、ウイルスの拡散には効果がないことになる
人での実験は少ないが、ワクチン投与により抗体ができるという報告はある
ただ、その抗体は感染を抑えるのに十分な効果を持つのか、どれくらい持続するのかなどは不明である
第五は、このウイルスの起源である
SARS-CoV-2はコウモリ(horseshoe bat)由来であるという見方に多くの研究者は同意している
コウモリで見つかったSARS-CoV-2類似の二つのウイルスは、遺伝子配列が96%、93%同一だという
起源を特定するには99%以上の同一性が求められる
一つの可能性は、コウモリからヒトに感染する前に中間宿主がいたのではないかというもの
パンデミック初期にセンザンコウが候補になり遺伝子配列が調べられたが、SARS-CoV-2との同一性は92%であった
おそらく、センザンコウからヒトに感染したのではないと考えられる
この問題もオープンのままである
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