2020年3月31日火曜日
3月を振り返って
3月も今日で終わる
今月は前半がフランス、後半が日本ということになった
後で分かったことだが、フランスで外出禁止令が出た時に日本に戻ってきた
少しずれていたら面倒なことに巻き込まれていたかもしれないので、幸運であった
そんな中、プロジェの進捗状況はどうだったのだろうか
まず気付くのは、精神的にリラックスできていることである
これまでも書いているが、複数のプロジェを並行させなくなったからだろう
一つにゆっくり集中しているという感覚がそうさせているのだと思っている
今年の初めから取り掛かっているプロジェが、ゆっくりとではあるが進行中である
もう少しで取り敢えず終わったと感じる時が来そうな感触がある
それが一段落すると、新しい展開があるのではないだろうか
COVID-19 の世界的趨勢(2020.3.29)
今日もジョン・キャンベルさんによる3月29日段階での COVID-19 の世界的趨勢を見ておきたい
全感染者数:678,720 死者数:37,100 快復者数:145,609
WHO の見解
早期発見(検査)、隔離、検疫が基本
すべての国が関わる
コミュニティでの活動、信頼の醸成が求められる
ワクチンは12-18か月後になる(すぐにはできない)
それまでは有効でない治療薬は使わないこと
治療効果があるものは潜在的に害を及ぼす可能性がある
エビデンスに従うこと、近道はない
ネット上で「なりすまし」での発言が見られ、サイバーセキュリティが求められる
ジョン・キャンベルの偽物チャネルも出ているとのこと
ロックダウン
ロックダウンしてから
死亡まで、3-5週
入院まで、1-2週
潜伏期は平均6日くらいなので、新しい症例が出るまで1週
今日ロックダウンしたからといってすぐに効果は表れない
イギリスではロックダウンにも拘らず感染が広がり、死者も増えている
イタリア
感染者数:92,472 今がピークではないか
ロックダウン以前に広がっていた可能性があり、死亡率は低いかもしれない
ロックダウンに入ってから3週で、検査数が増えている
新しい感染者は減少傾向、3月20日以来、カーブは平らになっている
ただ、死者は新たに1,000人増え、10,023人と多いが、数日で横ばいになるだろう
スペイン
感染者数:78,797
死者数:838人増え、5,700人
検査が不足
仕事への制限
韓国
感染者数:9,583
国境では数分で検査
イギリス
感染者数:17,320
死者数:260人増え、1,019 少なくとも2万人の死亡が想定される
ロックダウンに入って5日目
ドライブスルー・テストも施行
米国
感染者数:124,686
NYPDでは、>500の陽性
イギリス議会もそうだが、大統領以下、人が距離を保っていない
(政治家は自ら範を示すべき)
デンマーク
感染者数:2,370
学校、店はすべて閉じている
警察が見回り
10人以上の集会禁止(多すぎる!)
カナダ
感染者数:819人増え、5,655
首相、social distancingを守るように
日本の花見の写真を出して、少々心配であると言っていた
ヨーロッパから見ると、当然の反応だろう
2020年3月30日月曜日
現象学とは(4)
それでは、現象学で使われている方法とはどんなものなのだろうか
それは想像変更(variation imaginative)の方法である
想像力により、枠組みを変え、現象に異なる角度からアプローチしてそこに意味を見出すことだろうか
分析する際、ある特徴を除くが、そうすることにより対象をそのままの状態にして置く
しかし、他の特徴を除くと対象を破壊するだろう
そこから、その対象の本質的な何かを的確に指摘したことを我々は知るのである
それが種々の特徴が対象の本質に属しているという「本質直観」(intuition eidétique=形相的直観←エイドス)に導く
この本質は、本質を把握する中で一つのことを構成する意識の行為にしばしば依存している
従って現象学で最も重要なことは、「もの・こと」の成り立ちについての意識的活動の本質を抽出することである
それは知覚であり、記憶であり、判断などである
我々は「必然真理」(アポディクティックな真理)に辿り着く
それは必然であると見做され得るものである
例えば、人間は過去と未来を持つということ
あるいは、すべての知覚可能な対象は、ある時点で現れたものとは異なる面を持つというようなこと
我々は意識の行為により意図的に世界を対象とする者として、世界を超越する「超越論的自我」を発見するのである
自我が取り結ぶ関係は「間主観性」である
主観を持つ個人として、我々は公共の世界をどのように共有すればよいのだろうか
現象学者は、身体、言語、コミュニケーションの他のやり方の役割を検討する
この点は特にメルロー・ポンティにおいて重要である
インガルデンのような人は、美的経験などの経験の特別な形をよく研究してきた
また、どのように芸術作品が特別な経験に力を与え、同時に特別な経験が作品を生み出すのかについても研究した
(つづく)
日本の COVID-19 対策について
この週末、偶然にもBSの特集番組に遭遇した
その中で、対策責任者から少し気になる発言が出ていた
一つは、クラスターを潰すことを第一の方針にしているということ
その理由は、クラスターを抑えることができれば感染を制御できると考えたからだという
従って、感染者の周辺を徹底的に調べる必要が出てくる
しかし、これだけ移動の激しい社会で感染がクラスターに限られ、周辺調査を徹底することは可能なのだろうか
このことに関連して、感染は病院で頻発するので検査をしないようにしているという
実際に検査をしないことによって感染が抑えられているとまで言っていたと記憶している
それは検査の有無ではなく、病院に人が詰めかけることが抑制され、しかも検査数が少ないからではないのか
さらに、聞き間違いでなければ、これは「日本独自の」対策なのだというようなことも言っていた
危機の時、しかも感染症という謂わば普遍的な状況に対してこういう言葉が出てくることにも違和感を覚えていた
これまでジョン・キャンベルさんの解説を聞いてきた者としては、不思議に思うことが少なくない内容であった
重要なのは社会的な隔離と個人の隔離になるが、後者は検査することが前提となる
検査をしないために実は陽性の人が感染を広げている可能性が高いのではないだろうか
これが聞き間違いや杞憂ではないことを願うばかりである
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vendredi 10 avril 2020
その後の経過を見ると、上の記事の内容は聞き間違いではなく、事実であることが明らかになってきた
そして残念ながら、杞憂に終わりそうもなさそうである
あのような危機的で緊迫する状況での判断には様々な要因が絡んでくるものと想像される
今後のためにも、その過程がどのようなものであったのか、明らかにされる必要があるだろう
日本の性向の一つとして、真実に迫る力が弱く曖昧に終わらせるところがあるので尚更である
今の段階では、被害が最小限にとどまることを願うばかりである
2020年3月28日土曜日
現象学とは(3)+ COVID-19
現象学は特別な語彙を使うので、語彙を知らない人や混乱する人に分かるように現象学を提示するのは難しい
分析哲学との比較はここでも有用である
分析哲学者は、しばしば単純な文章で言うことができる命題の妥当性を検討することを提唱する
例えば、その中の一人は、名詞は指し示めされる対象と結ぶ因果関係のおかげで意味を持つと主張するだろう
他の人は、この考えは疑わしいか、間違っていることを示そうとするだろう
あるいはまた、分析哲学者は伝統的に神の存在に有利なこれこれの証拠が正しいかどうかを自問するだろう
「神」という言葉を含むすべての命題は最初から意味がないと判断するのでなければではあるが
対する現象学者は、「もの・こと」が我々にどう見えるのか、経験の中で我々にどう与えられるのかに興味を持つ
他の議論をすることによって議論の解析を目指すよりは、志向性の生を記述し、それを解釈しようとする
それは現象学者が議論しないということではない
例えば、フッサールの『現象学の理念』(1913)とラッセルの『心の分析』(1921)を交互に読むだけで十分である
方法と対象の違いが掴めるだろう
フッサールは「哲学的態度」を適用して、志向性の生の本質に至ることを可能にする
心理学に特有の自然主義的態度を超えるのである
ラッセルはヒュームのように、物理的因果の世界における心的生活の可能性について自問する
これは心の哲学の中心的テーマの一つになるものである
フッサールにとっての哲学の究極の目的は、新しい科学に至ることである
それは、対象の構成の在り方について志向性の生の面から自問しない科学とは異なっている
それでは思考や精神の性質それ自体に入り込むことができない
現象学の中心にあるのは、この志向性の生を記述することである
現象学者が分析哲学を単純で表面的だと考える傾向がある理由がそこにある
分析哲学は基礎を問うことを既定のものとは捉えないのだろうか
おそらく、志向性の起源を「問う」ことはできないのだろう
志向性の生の対象の記述と意識の動きにおいてそれを構成している主観的志向を記述することは分離できない
前者の志向(思考)する対象に関するものをノエマ、後者の志向(思考)に関するものをノエシスと言った
このような記述に努めることにより、「もの・こと」の本質的構造に辿り着くと現象学者は考える
心理学のエピステモロジーをやること、あるいは因果性と自由の違いを省察することなどで「満足」しないのである
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COVID-19 に関するフランスでの最新情報
外出制限と学校閉鎖の期間が4月15日まで延長された
いつまで続くのだろうか
日常生活のストレスは相当のものではないかと想像している
1)3月27日付政令により、3月17日から実施している外出制限の期限が4月15日まで延長
また、学校閉鎖期間も4月15日まで延長
2)外出制限期間中は特例外出理由として認められている理由以外の外出は認められない
特例外出以外の外出をした場合、特例外出であっても証明書を所持していない場合、罰金の対象となる
現象学とは(2)
確かに、現象学の中には違いはあるが、共通の特徴もいくつかある
以下に列記したい
1)現象学者は、ある種の純朴さに特徴付けられる自然な態度が存在すると考える
なぜなら、この態度を採ることによって、我々を取り巻く現実の中で我々が存在する意味があると信じるからだ
しかし、我々は意識と志向性を具えている
従って、「もの・こと」は対象化し、我々の意識によって構成されたものとして存在する
それは受動的に我々に与えられるのではなく、我々が意識を働かせることにより現実に意味を与えるのである
これがフランツ・ブレンターノの提唱した志向性という概念である
2)このように、哲学はある種の現象学的転換を行わなければならない
方向性を完全に変えることにより、現象学に移行する
「もの・こと」に向かう代わりに、我々にとって、主体にとってのその意味を分析するのである
そして、実証科学に現れる客観的な意味の領域から離れ、 主観的に生きる中で直に経験する意味に向かうのである
それは「現象学的エポケー(判断停止)」、すなわち「現象学的還元」(注参照)に戻ることである
そして現象学者は、その正確な性質と様相を議論するのである
3)フッサールにとっての志向性は、本来世界に在るものではなく意図的に構成された現象や意識の行為の特徴である
このように志向性は、意識が「もの・こと」と結ぶ関係、志向性がデータとして「もの・こと」を示す関係を指している
ハイデッガーや一般的な実存主義者にとっては、志向性を示すのは人間そのものの実在である
4)フッサールに感化された現象学者にとっての主要な哲学的問いは、意味の問題である
一方、ハイデッガーに霊感を受けた者にとっては、存在者の実存の問題になる
いずれの場合も、その主要な役割は主観性に帰せられなければならない
フッサールの場合は世界を構成する存在者として、ハイデッガーの場合は存在者の実存を問う存在者として
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「現象学的還元」について
狭義には「超越論的還元」を指し、広義には「形相的還元」をも含めたものをいう
我々は自然的態度では世界の超越的存在の定立を日常暗黙のうちに認めている
フッサールはこれでは厳密な学問的認識が不可能であるとして、自然的態度を徹底的に反省する
反省の眼差しを自分自身の意識作用そのものへ向けるのである
自然命題を「かっこに入れる」(エポケ―=判断停止)この操作を「超越論的還元」と言った
それにより、実証主義的方法では行き詰まっていた人間諸科学のうちに「意味」のカテゴリーを回復しようとした
世界の存在意味は主観性の内に求められなければならない
そのため、純粋意識の事実から純粋意識の本質への還元を「形相的還元」として「超越論的還元」と区別した
(つづく)
2020年3月27日金曜日
COVID-19 の最新情報(2020.3.26)
ジョン・キャンベルさんの昨日のお話から始めたい
最初に、Q&Aがあった
1)この感染は昆虫などを介するのか: NO
2)このウイルスは変異しやすいのか: NO
変異はゆっくりしているため、一度免疫ができるとその後の感染を防御できることになる
さらに、一つのワクチンができれば、パンデミックを抑える可能性が出てきた
3)この抗体はどれくらい存続するのか: 1年から10年、ひょっとすると一生の可能性もある
これらが本当であれば、GOOD NEWSと言えるだろう
次に、昨日現在の数字は以下の通り
感染者数: 479,915(症状が出ているのが 342,540 。内、96%は症状が軽く、重症は4%程度)
ただ、キャンベルさんはそれぞれ80%、12%と見ているので、上の数字が本当であれば希望が持てるとしている
死者数: 21,557
快復者数: 115,793
WHOの発表
さらに多くの人が死ぬだろう
その数は、どのような措置を採るのかに係っている
全世界的な封鎖が求められている
より明確に標的を同定する対応(検査など)が必要になる(ウイルス抗原だけではなく抗体の存在も)
インドからは安価な検査法を大量生産するとのニュース
すべての政府に隔離や検疫の強化を
英国、米国、イタリアなどの誤りに学び、トップ・ダウンの措置が必要である
当分は社会生活に支障が出るが、パンデミックを抑えるためには耐えなければならない
ロシア: 1週間の休み、家にいるように
イタリア: 感染者数=74,368、死者数=7,503
北イタリアのロックダウンにより、南イタリアへの拡散が抑えられているようだ
スペイン:マドリッドのロックダウンは2週目に入ったが、さらに4月11日まで延長
感染者数=49,515(ロックダウンにより増加は減衰するだろう)、死者数=3,646
フランス: 感染者数=25,232、死者数=1,331(ロックダウンの効果が表れるだろう)
ロックダウンにより、これらの国ではこれから数週間のうちにピークを迎えるのではないか
封鎖という上からの対応と同時に、感染者を特定するという下からの対応が必要になる
しかし、標的を同定する検査はまだまだ不十分
上・下からの十分な対応が求められる
アフリカ:16か国に広がっている(クラスターからコミュニティへと拡散)
ピークはこの夏ではないかと見ている
南ア: 金曜からロックダウン開始
ナイジェリア: 感染者数=51、死者数=1
コンゴ: 最初の死亡例、ロックダウン
死に至るには数週間かかるとされているので、すでにかなり広がっているのではないか
ニュージーランド: 感染者数=283、ロックダウン2日目
米国: 感染者数=68,573(NY州だけで21,000)、死者数=1,036
クオモNY州知事によれば、80%は快復し、15%は要入院で、ピークは3週間後に来る
現在、ICUに3,000人が入っているが、その10倍のベッドが必要になる
ロスアンジェルス市長によれば、NY市から6-12日遅れの経過
カリフォルニア州では4,000万人がロックダウンされているが、フロリダ州ではまだ
ニューオーリンズではマルディグラもあり、感染者数が急増
英国: 感染者数は1万人を超え、465人が死亡
ロックダウンがあったので、ピークは2-3週間後ではないか
問題は、ロックダウンが解除されると再び増加する可能性があること
ロックダウンを長くし、そこで感染者をできるだけ多く同定して隔離することが重要になる
今日の結論: 上からの対応(ロックダウン=集団の隔離)と下からの対応(検査→個人の隔離)が重要になる
日本では後者の対応が大幅に遅れているように見える
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遅きに失したとはいえ、日本政府からも他国に合わせる形の厳しい措置が発表された
1.新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、3月26 日、水際対策の強化のための新たな措置を決定した
2.フランス、モナコ、アンドラを含む欧州21カ国が入域制限対象地域に追加指定された
過去14日間同地域に滞在し、27日午前0時以降に同地域を出発して日本に帰国する日本人について:
検疫所長が指定する場所(自宅等)に14日間待機し、公共交通機関を利用しないこと
さらに、PCR検査と保健所等による定期的な健康確認が実施される
3.これらを踏まえ、帰国する場合は、出発前に以下について確認すること
(1)前記の措置を前提として、帰国後の旅程に支障がないこと
(2)帰国後14日間の滞在先を確保していること
(3)空港から滞在先までの移動手段(自家用車、レンタカーなどの公共交通機関以外)を確保していること
4.フランス、モナコ、アンドラを含む欧州21カ国は、入国拒否を行う対象地域に追加指定された
過去14日以内にこれらの地域に滞在歴のある外国人について:
特段の事情がない限り、入国拒否対象となる
5.今般の措置はフランス海外県・海外領土も対象となる
【参考】厚労省のサイト「新型コロナウイルス感染症について」
2020年3月26日木曜日
現象学とは(1)+ COVID-19
まず、COVID-19 に関する情報から
先日も触れたように、フランスでは交通機関が大きな影響を受けている
新らたな空港への影響は、以下の通り
(1)現時点ではCDG空港はT2G及びT3、オルリー空港はT1及びT2が閉鎖中
(2)3月26日23時30分からオルリー空港のT4が閉鎖
(3)3月31日23時59分からオルリー空港T3も閉鎖で、空港全体が閉鎖に
ひょっとすると、CDGの閉鎖も時間の問題かもしれない
日本の対応は鈍かったので、将来フランスに近い状態にならないことを願いたい
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今日から何回かに分けて、現象学に寄り道をしてみたい
現象学に関しては、まだ日本にいる時に拙ブログを読んだフランスの哲学教師からご宣託が届いたので忘れられない
それは、「あなたは現象学、就中ハイデッガーとフッサールを愛するために生まれてきたのです」というものであった
それではこの学問を覗いてみたい
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「現象学」という言葉はヘーゲルなどによっても使われていたが、フッサールの哲学の後に現れたものである
これは多くの哲学者により実践された
マックス・シェーラー、ニコライ・ハルトマン、ローマン・インガルデン、ハイデッガー、メルロー・ポンティなど
さらに最近のフランスでは、レヴィナス、ミシェル・アンリ、ジャン・リュック・マリオンなど
現象学は現代フランス哲学の主要な局面の一つである
現象学はその主張を容易に説明できる学説ではない
現象学は哲学の実践のやり方に関するもので、分析と解決に至る問題提起と方法の全体に関するものである
それは分析哲学の場合と同様である
現象学者は哲学とは何かについて、そしてその最良のやり方についてのある考えを持っている
これも分析哲学者の場合と同じである
従って、「これが分析哲学である」と言うことができないように、「これが現象学である」 とも言えない
ただ、現象学をフッサールが言ったことに還元し、他人がその違いを強調する誤りを犯したと考えることはあるが、
ポール・リクールは「大きな意味での現象学はフッサールの全作品と彼に由来する異端の考えのすべてである」と言った
フッサールの超越的観念論とローマン・インガルデンのような弟子の実在論との間には決定的な違いがある
「現存在」というハイデッガーの概念とメルロー・ポンティの身体特有の現象学との間の違いを考えてもよい
この二つの中に入ると、全く違う空気を吸うことになるのである
2020年3月25日水曜日
精神と魂と身体(1)
古い問題、新しい考え?
精神と身体がどのような関係を維持しているのかという問題は、実は新しいものではない
この問題は現代哲学の中心にあり、哲学は認知科学と共にその回答に重要な進展を齎してきた
認知科学は、心の哲学、心理学、言語学、生物学、神経科学の交差点にある
一つには、認知科学が知識あるいは認識の領域において、新規の、決定的な知を進展させたと見られている
他方、認知科学のお陰で重要な進歩を齎すことができたという考えは、哲学者によって語られてきた神話の特徴がある
精神と身体の関係が問いかける問題は概念的なものである
従って、この点に関しては、どんな発見も根源的な変化を齎すことはできない
これらの問題は、人間の行動についての記述とその記述において用いられる概念に関するものである
人間がすることを説明するためには、そこに意図、欲求、恐れ、期待などがあると見做すのである
理解すべきことは、我々が人間の行動を説明するために、なぜ、どのように心理学的概念を用いるのかということである
しかし、このテーマに対する回答を心の科学に期待することはできるだろうか
この問いに対する否定は、心の科学が我々に何も教えないということを意味しないのは勿論である
このテーマに関する過剰な懐疑論に対する医学の進歩を容易に引用することができるだろう
しかし考えることは、純粋に心的な、あるいは純粋に物理的な(あるいはその両方)過程を示すことでは説明されない
精神に関する「デカルト的概念」と「新アリストテレス主義的概念」には反対することになるだろう
前者は、デカルトの二元論を問題にするならば、いささかも消え去ることはない
「認知科学」となって、唯物論の影響を受けている
後者は、心理学的な記述について概念的な分析を行うもので、「心の科学」に変容させるとは主張しない
代替案は限定されているように見える
現代哲学において、本当にデカルト主義とアリストテレス主義の間にしか選択の余地はないのだろうか
他の道が実行可能だったかもしれない
その一つは、現象学(明日以降に取り上げる予定)に重点を置くものだろう
もう一つは 、ジル・ドゥルーズのように欲望についての省察を通して、心と体の関係について教えるものだろう
しかし最も興味深い代案は、私が提案する新デカルト主義と新アリストテレス主義の間で発展させるものである
2020年3月24日火曜日
フランスに関わる COVID-19 情報
在パリ大使館から新たな連絡が入った
フランス国内の状況の変化とそれに伴う外務省の新たな方針が書かれてあった
日仏の行き来に制限が加わるということだが、いつまで続くのだろうか
ポイントは以下の通り
● 3月23日、日本国外務省は、欧州各国に対する感染症危険情報を発出し、フランス、モナコ、アンドラを含む一部の国を「レベル3:渡航は止めてください」(渡航中止勧告)に引き上げました。
● フランスにおける厳格な外出規制の実施、EU圏への入域制限、日本国における水際対策の強化等を受け、航空便の減少が見込まれますのでご注意ください。
● 公共交通機関に関し、TGVの運行は通常の10~15%、RATPについては、RER、メトロの一部路線が30%まで削減、バスは平均40%の運行になる見込みです。
● 全国のホテルで一時営業を休止する動きが増えているようですのでご注意ください。
2020年3月23日月曜日
徳認識論と信念倫理(5)
最近の新たな方向付けについて懐疑的になるかもしれないが、エピステモロジーはこの領域の我々の期待を再定義する
ここまでのエピステモロジーは、知識、理性、正当化、認識論的規範の理論を提示することを狙っていた
ドイツ語で言えば、「知の理論」はカントの精神を持つ Wissenschaftslehre となるだろう
それは、常に多くの哲学者にとっての知の哲学である
しかし、新しい概念においてはアリストテレスの影響がある
ただ、アリストテレスのテクストを厳密に参照するというよりは、いくつかの考えを参考にすることである
それは、徳の重要性、それから理性、知識の実践における自己の完成や人間性の充実した発育の重要性である
つまり、エピステモロジーは認識論的価値を持つ知的態度を記述することである
なぜなら、エピステモロジーは我々の知的成熟や完全な理性の実現を促進する可能性があるからである
もし人間を理性的動物であると定義すると、理性的能力の完全な成熟は人間性の実現を意味している
なぜ我々は知るようにしなければならないのか、なぜ真理を欲しなければならないのかという問いが主要になる
換言すれば、重要なことは価値としての知識と理解である
重要な概念となるのは、認知に関する範疇としての、そして理解の仕方としての感情である
これは「知の理論」の枠組みの中では想像できなかったことだろう
ある意味で、これは知識の哲学に切り込んでいた多くのポストモダンの哲学者が興味を持った問題である
しかし、ポストモダン哲学者には次のような傾向があった
それは、知る意欲や真理の欲求を我々の形而上学的錯覚の徴、そして支配や権力欲の表れと捉える傾向である
徳認識論においては、全く逆である
認識論的徳とは、我々の性質の完全な成熟、認知的と同時に道徳的な我々の完成に不可欠な条件である
この意味で、エピステモロジーと人間性の形而上学は相互浸透するのである
それはまた、形而上学の現代におけるルネサンスが取っている形態の一つでもある
2020年3月22日日曜日
徳認識論と信念倫理(4)
徳認識論は、徳倫理学における道徳的生活をモデルにして認識論的生活を考える
重要なことは、それを尊重することにより信念の正当化が保証される認識論的規範ではない
徳倫理を生きる人にとって良い道徳的生活とは、我々の中にある最良のもの、我々の道徳的徳の実践である
この実践が我々の人間性を実現し、可能な最良の生活を保証するのである
同様に、良い認識論的生活とは、認識論的徳の実践を通して理性的人間性を実現することだろう
認識論的徳とは、例えば、精神を開くこと、知性的勇気、知的活動に相応しい節度のようなものである
シェフィールド大学のクリストファー・フックウェイは、次のように言っている
「徳認識論は、認識論的評価の実践を記述し、知識や正当化に中心的役割を与えることなく、その基本的な語彙を明確にできる」なぜなら、第一の役割は人間が行う徳に帰属しているからである
このように、現在の認識論は20世紀のある時期そうであったものとは異なるものになっている
我々を知識と正当化に焦点を合わせた認識論に導いたと思われる行き詰まりは、克服できるだろう
特に、認識論はデカルト以来そうであったような懐疑主義の挑戦に対する回答だけではなくなっている
認識論は最早、認識論的正当化の理論ではない
そうではなく、良き認識論的生活を送っているという主張を保証する特徴の質の探究である
重要になるのは知識の定義ではない
寧ろ、それによって人間性を実現する認識論的生活の望ましい在り方を記述することである
2020年3月21日土曜日
穐吉敏子さんとストア哲学
寝る前にテレビをつけると、何という偶然だろうか
ジャズピアニストの穐吉敏子さんが出ているではないか
このセッティングはデジャヴュである
もう4年ほど前になるが、日本に戻っていた時にテレビをつけると彼女が出てきたのだ
その時の様子は以下の記事にあり、比較的アクセスが多いようだ
Be kind to yourself(2016.4.2)90歳になったという彼女が、今回も実に興味深いことを言っていた
思い出しながら書いておきたい
一つは、自分に依存することとそうでないことを分けて考え、自分に依存しないことは考えないこと
これはまさにストア派の教えである
彼女の主張は次のようなことだった
年を取ることは、自分ではどうしようもできないこと
自分にできることは、その間に自分の中に何かを蓄積すること、何かを極めること
そうするように努めること
もう一つの点は、「死んだあとが勝負だ」と言っていたこと
換言すれば、時の流れに耐えられるものを残すこと
殆どは時の流れに晒されて忘れ去られるが、本物だけは残る
多くの作曲家がいた中で、バッハやベートーベンは残ったのである
真の芸術家の言葉を聞く思いであった
4年前と同様、今回も偶然によりこの瞬間に出会うことができた
2020年3月20日金曜日
COVID-19 の世界的趨勢(2020.3.19)
ジョン・キャンベルさんによる昨日の段階における COVID-19 の世界情勢分析を紹介したい
詳細はご本人の説明に当たっていただくとして、以下に要点を纏めておきたい
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最も重要なメッセージは、まだ事態を深刻に捉えていない人がいるが、その態度を改める必要があること
十分な注意を怠らないこと
例えば、手洗いやスマートフォンのような日常使う器具の消毒、換気の悪い込み合った場所を避けるなど
そして、パンデミックはまだ初期段階にしかなく、これからも我々の生活は変えざるを得ないことを理解すること
この状態はワクチンができるまで、例えば1年、ひょっとすると2年ほど続くかもしれない
ただ、近いうちに抗体検査ができ、免疫の状態が分かるようになる可能性がある
現在、中国よりヨーロッパが発生の中心地になっている
WHO の発表によれば、感染者数は22万を超え、死者数も9,000を超えているが、8万人以上が快復している
各国の状況は以下の通り
中国: 新しい感染者は外から入ってきた34人を除き出ていない
この数字を信頼できると考えているジョンさんは、中国政府の性質を見ていないとして批判されているようだ
上の数字は、隔離策が有効であったことを示しているが、隔離が解除された時にどうなるのかは分からない
台湾: 1月から108例で、プロアクティブ政策が有効だったのではないか
外国人の入国禁止や厳重な検疫、さらに国家管理の問題はあるが、モバイルフォンによる追跡が奏功か
モバイルフォンによる追跡は、韓国やイスラエルでもやっているという
タイ: 272例で増え続けている
南アフリカ: 120例
韓国: 8,565例が確認され、新しい例は減少しているが、ソウルのあたりで新しいクラスターが発生
チリ: 非常事態宣言を発令
ブラジル: 529例中4例が死亡
ペルーとボリビア: 国境閉鎖
米国: 現在9,415例で、130人が死亡しているが、これは近いうちに10倍くらいにはなるのではないか
カナダとの国境閉鎖、軍の病院船を2隻(少なくとも1隻は1000床)を出している
トランプが自らを「戦時の大統領」と形容したことは、遅きに失したとはいえ、評価できる
イギリスの研究者は、何もしなければ220万人が亡くなると試算
数週間後にイタリアと同じ状況になる地域が出る可能性がある
イギリス: 2,644人が感染、検査数は一日2.5万に増加、学校は無期閉校、2万人の軍隊が動員
キューバ: 11例
イタリア: 35,731例、死者はこの一日で475人増え、3,000人を超えた
8,000人が規則違反の罰金だが、ジョンさんによればそれほど悪い数字ではないという
中国から医師団がイタリアの援助に来ている
イタリアでも軍隊が出ているようだ
スペイン: 1.5万人+が感染、昨日だけで2,500例が確認された
ホテルは近く閉鎖され、家に留まることは義務付けられている
ソマリア: 1例目が見つかった後、学校は閉鎖された
イラン: 18,407例中、1,000人以上が死亡
ドイツ: 13,000+例、学校や店は閉鎖
メルケルは、社会的隔離をしなければ1千万人が感染する可能性がある、第2次大戦以降最大の課題だと発言
ベルリンには1,000床の病院が開設(会議場を改築したもの?)
コッホ研究所の発表によれば、この状態は2年ほど続き、その間に波状的な感染があるかもしれない
フランス: 9,000+例中、264人が死亡(一日の増加は89人)
17日(火)から店などが強制的に閉鎖、罰金を支払ったのは5,000人で悪くないと言っている
ロシア: 147例で、死亡は1名だが、実際には広がっていると見ている
タイ: 272例で増加傾向
トルコ: 191例で、火曜に最初の死亡例、外出は3週間禁止
2020年3月19日木曜日
徳認識論と信念倫理(3)
知的生活にとって、徳認識論は1960年代に誕生して以来、徳倫理学と並行するものである
それは、エリザベス・アンスコム、ピーター・ギーチ、アラスデア・マッキンタイアらの仕事の中で生まれた
徳倫理は規則による倫理とは対立する
後者においては、一つの行動が道徳的かどうかは規則や命令に依存しているかどうかで決まる
カントにとって、この命令は定言的である
すなわち、如何なる経験上の条件にも煩わされることがない
例えば、嘘を決してついてはいけない、なぜならそれは普遍化できない行為だからである、となる
優れた道徳的規範は、行動を縛る原則が普遍的法則に高められるように行動することである
規則による倫理は、すべての人間の行動の道徳的規範を成す規則は何なのかを決めることに関わっている
それに対する徳倫理は、行動ではなく動作主あるいは行動する人間を対象とする
行動の道徳性を生むのは、その人間の道徳性である
そして、人間の道徳性は、正義、勇気、節制などの性格の特性に由来する
正しい道徳的問いは「私はどのような行いをすべきか」ではなく、「私はどのような類の人間であるべきか」である
優先される概念は、務め、義務、命令の概念ではなく、徳、卓越、善、信頼のそれである
嘘が禁じられるのは、それが普遍化できないからではなく、嘘をつく人の堕落した特徴を物語るからなのである
(つづく)
2020年3月18日水曜日
徳認識論と信念倫理(2)
正当化された我々の信念、あるいは信念をもって何かを信じている我々
この二つは同じではない
徳認識論は、信念ではなくそれを信じている人に重点を置くという変化から生まれた
この考え方は、正当化された信念の特徴より、知っている人の特徴に興味が向かう
思考の正当性や信憑性を成すものを問うことと、何かを信じている人の信頼性を検討することは別である
我々の信念が保証されるためには、我々はどのような類の人間でなければならないのか
認識論における最も根本的なこととしてこの疑問を持つことが、現代哲学者の認識論の理解の仕方を変えることになる
エピステモロジーは信念(心情)倫理として捉えることができるだろう
つまり、あることを信じる資格があるのかどうかの問いに対する答えである
例えば、この本の読者がそこで読んだことを信じる資格はあるのか
21世紀に生きていることを信じる資格を持っているのか
しかし、我々の資格に関する議論は形だけのものに過ぎないかもしれない
上で見られた議論のやり方を交換しましょう
しかし、それはフー・ファイターズの最新アルバムが素晴らしいことを信じることに関するものなのか
神の存在を信じることに関するものなのか
今回は議論がより激しくなる恐れがある
ある人は、「しかしそれは『下品なロック』で何の美的価値もないし、素晴らしくもない」と言うだろう
「神?でも君はその存在を信じていない。そんなのは馬鹿げているだけではなく、無責任だ。なぜなら、宗教的狂信がどれだけの不幸の直接原因ではないのかと言えるからだ」
徳認識論から見れば、重要なことは、例えば、神の存在を信じることが受け入れ可能かどうかを知ることではない
そうではなく、神の存在を信じている人が承認しがたい認識論的態度を採っているかどうかを知ることなのである
信念倫理は、最早信念の特徴には向かわない
むしろ、態度、やり方、習慣、悪癖と徳について強調しながら倫理に近づくのである
(つづく)
2020年3月17日火曜日
フランスのCOVID-19 に対する最新の対策
改めて、在パリ大使館から連絡が入った
対策は詳細に及び、フランス政府が事態をかなり深刻に捉えている様子が伺われる
昨日のトゥールは人通りが少なく、予想通り、店・カフェ・レストランなどは閉まっていた
ただ、ブランジュリーやタバ・プレスは開いているところがあった
以下に、若干言葉を変えて転載したい
1.マクロン大統領テレビ演説の概要
(1)17日正午から少なくとも15日間、仏国内(本土及び海外領土)において、外出を大きく制限。野外における集会、友人や親族との会合は禁止。1メートルの距離を守り接触を避けた形での買い物、通院、テレワークが困難な場合の通勤、若干の運動といった必要な外出のみを許容。規則に反した者は罰則を受ける。
(2)EU共通の決定により、17日正午から、EU及びシェンゲン圏への入境を閉鎖。EU域外の国とEU域内の国の間の移動を30日間停止。現在EU圏外にいるフランス人の帰国は可能。
(3)市町村議会選第2回投票の延期を決定。
(4)コロナウイルス対策に集中するため、年金改革を含む現在進行中の改革を一時中断する。18日の閣議で、政府が緊急事態に対処し、必要な場合には危機管理の分野に厳格に限った上で、政令により法律を制定するための法案を提案、19日に議会で審議。
(5)最も被害を受けている地域への支援を実施。患者の集中や病院の飽和に直面しているグラン・テスト圏を支援。近日中にアルザス地方に軍の医療施設を展開することを決定。
(6)経済面に関しては、税金及び社会保険料支払いの延期、銀行の貸し付けの返済期限の繰り延べ、国による3000億ユーロを上限とした保証に言及。危機に瀕する小企業に関しては、税金、社会保険料、水道・電気・ガス代金、賃料支払いも延期。また,部分的失業の拡大、起業家、手工業者、商人のための国による連帯基金の設立にも言及。
2.カスタネール内務大臣が発表した各措置の詳細
(1)移動を最小限にする措置
a)17日12時から15日間(延長可能性あり)、厳格な移動制限措置を採る。基本的には自宅待機で、イタリアやスペインに倣った封じ込め措置である。
b)以下の事項については例外と見做され、事前に証明書を取得しておくことで移動が許可される。
・テレワークが不可能な場合の自宅から職場への移動(併せて職場を証明する書類が必要)
・許可された近場の商店での必需品の買い物
・医療関係業務のための移動
・子供の保育又は脆弱な人の支援のための移動
・運動(個人で行い、自宅の周囲で人の集まりを伴わないものに限る)
c)10万人の警察と国家憲兵隊が動員され、フランス全土に検問(拠点式、移動式)が設置される。歩行者も含め、移動に際しては逐一、移動の理由を記載した自筆の証明書(document attestant sur l'honneur le motif de son déplacement)の携帯が義務となる。今晩(17日)中に政府のサイトでダウンロードが可能になる証明書のフォーマットには、移動の性質、行き先、理由を記載する。併せて、職場を証明する文書(carte professionnel, certificate de leur employeur)の提示が求められる。
d)違反した場合の罰金は現状では38ユーロであるが、近く最大135ユーロにまで上げる予定。
(2)国境関連
a)EU圏への入域
・シェンゲン協定加盟国、EU加盟国と英国の市民のみが入域できることとなる。EU非加盟国民の入域は、滞在許可証を保持している場合や、第三国の保健関係者などのいくつかの例外を除き、認められない。
・他方、商品の入域と出域は継続される。
・EUに入域する絶対的な理由のない第三国の国民の入域は、入域禁止の対象となる。
b)EU内部における国境
・国境の「完全な閉鎖」は行われないが、移動は必要最小限に制限される。
・越境労働者は、居住証明書や雇用証明書の提示によって日常的に越境することが可能。
・商品の移動の制限は論外である。医療物品や食料等は影響を受けない。
・これらの措置は均衡がとれたものになり、隣国と適切に調整され、欧州委員会に通知される。
2020年3月16日月曜日
徳認識論と信念倫理(1)
懐疑主義者から見れば、我々の信念は要求性の高い認識論的正当化の基準を満たすことはできない
彼らは、我々が認識論的正当化において概してだらしないと考えている
認識論における不満はそこに由来する
そのスローガンは、次のようなものである
「私が知っているすべては、私は何も知らないことである」
「クセジュ?(私は何を知っているのか)」
デカルト、ロック、カントのような基礎付け主義者は、認識論的正当化の基準を出すことができたと主張する
デカルトは思考の明晰さと洗練、ロックは証拠と信念の度合いとの釣り合い、カントは実証的立証性を提示した
基礎付け主義者は、懐疑主義者に答えようとするのである
ところで、それは可能だろうか
現代哲学者の認識論的プロジェは、我々の信念の認識論的価値を検討することと一体化する
これはラッセルまでとそれ以降のことだが、1980年代から新しい哲学者が現れる
彼らは正当な信念の規範や知識の基盤の問題に関する研究と縁を切るのである
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基礎付け主義(fondationnalisme; foundationalism)とは、信念や判断の構造に関する立場であり、哲学のさまざまな分野に存在する。
• 認識論においては、信念が正当化されるのは基本的な信念によって基礎付けられることによってであるという考え方を指す。
• 倫理学においては、倫理的判断が正当化されるのは基礎的な倫理判断によって基礎付けられている場合であるという考え方を指す。
反基礎付け主義とは、知識を基礎付ける 確実な基盤の存在を認める基礎付け主義を批判し、反対する主張。
リチャード・ローティに代表される。
フランス現代思想のポスト構造主義、ポストモダンも反基礎付け主義的傾向をもつ。
真理・理性といったロゴス中心主義を批判し、総じて相対主義的な傾向を持つ。
(Wiki より)
(つづく)
2020年3月15日日曜日
フランスにおける COVID-19 の新たな対応策
フランスにおけるさらに具体的なCOVID-19対応策が発表されたとの連絡が大使館から入った
以下に、その内容を転載したい
1)14日(土)15時現在、フランスにおける新型コロナウィルスの感染者は4,499人、うち91人死亡と発表された。加速度的な感染拡大を受け、仏政府は流行状況をステージ3(全土において活発にウイルス流行が進行)に引き上げた。
2)フィリップ首相は人との距離を取る必要があるとして、新たな措置を発表、協力要請をした。
- 15日0時から新たな指示まで、生活に必須とは言えない全ての場所を閉鎖する。特に、レストラン、カフェ、映画館、ディスコである。宗教施設は閉鎖されないが、集会は延期すべきである。
- 食料品、薬局、ガソリンスタンド、銀行、タバコ・新聞販売所といった必須のものを除き、全ての商店も対象となる。
- 市民の生活に必須の全ての公共サービスは閉鎖されない。
- 都市交通も動き続けるが、移動は少なくし、都市間の移動を避けるようにする。公共交通事業者は、事業計画をこの措置に漸進的に適応させていく。
- この措置の実施において、規律を一層発揮してほしい。集まるのを最大限避け、家族や友人との会合を制限し、公共交通機関は職場にいることが必須で職場に向かう際のみ利用するようにすること。真に必要な買い物、運動、投票等を除いて、外に出ないでほしい。
4)連帯保健省のサロモン保健総局長による発言概要は以下の通り。
- フランスは、国レベルでの感染症の初期段階にある。多くの地域において、ウイルスが速いスピードで激しく流行している。第3フェーズでは、流行の影響を緩和することが必要となる。そのためには、防御措置の強化が必要である。ごく近日中に、この感染症は一般化するかもしれないが、全ては我々の行動にかかっている。各自の役割に関する意識がまだ十分でない。まさに今、行動を変える必要がある。
- 14日の時点で、PCR検査で確認された感染は4,500例で、これは72時間で倍増したことを意味する。
- 最も影響を受けている6つの地域は、コルシカ,グラン=テスト,ブルゴーニュ=フランシュコンテ,オー=ド=フランス,イル=ド=フランス,オーベルニュ=ローヌ=アルプ。重症例は300で,蘇生施設に入っている。半数以上は60歳未満である。91名が亡くなり,このうち71名が75歳より上である。98%の方は回復している。
- 行き来しているのはウイルスではなく、人である。接触を制限すればウイルスの感染は減少する。頭痛や筋肉の痛み、発熱等の軽度な症状がある場合、家に留まることである。電話番号の15は、重症や呼吸困難の方の対応のために存在する。必要があればかかりつけ医に電話して助言を求めてほしい。
- 人とは1メートルの距離を取ること、コンタクトを制限することなどを実行してほしい。高齢者、脆弱な方、70歳以上の方は、自宅で待機し、人を呼ばず、必要最小限の外出に留め、子どもとは接触しないでほしい。
- 重症でない場合、家に1週間待機して回復を待ち、外出せず、コンタクトもせず、必要であればかかりつけ医に電話して遠隔医療を受けてほしい。同居人や家族も自宅で待機してほしい。指示なしに抗炎症薬等を摂取せず、薬を飲む前にかかりつけ医に相談してほしい。症状が悪化し、呼吸に困難を覚えるようになったら、15番に電話してほしい。
- 医療関係者がマスクを使用できるように、公共精神に基づいた対応を取ってほしい。
エピステモロジー(15)+ アメリカ大統領民主党予備選
信頼性主義(4)
しかし、我々は信頼のおける目利きであり、抜け目ない天才の騙しの犠牲者にもなり得ることはないのか
T が今歯を磨いていると想像し、実際にそれは彼がしていることだが、それを信じる理由が何もない場合
わたしは信頼のおける目利きなのだろうか
知識を獲得する信頼性ある過程でないことを見つけるにはどうしたらよいのか
例えば、わたしがある朝、A が電車を降りるのを見たとしよう
わたしの信念が形成される過程はどれだろうか
(1)知覚、(2)目による知覚、(3)朝の目による知覚、(4)駅での朝の目による知覚、そしてこんなのもありだろう。(5)A が帽子を被っている時の駅での朝の目による知覚(1)から(5)の中で、わたしの信念を正当化する適切な過程はどれだろうか
それが厳密で狭義のものであれば、この過程の信頼性は完璧になるだろう
しかし、(1)のように一般的なものであれば、同じ過程から生まれた二つの信念の一方しか正当化されないこともある
この違いはどう説明されるのだろうか
このような反論の議論が生まれるところが、信頼性主義を生きたオプションにしているのである
なぜなら、それに答える可能性がおそらくあるからである
例えば、先に挙げた信頼性主義のゴールドマン流の定義の(2)がある
S の信念が形成された過程の他に、それに従ったとしても S が p を信じることにはならないような信頼性ある、あるいは条件付きで信頼性ある過程がない場合これが上のような反論に答えることを可能にすることはないのだろうか
読者はここで、それを考え、いろいろな例を見つけたり想像したりするのがよいだろう
エピステモロジーとはこのように気晴らしになる楽しいことなのである
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アメリカ大統領民主党予備選
head-to-head の討論会を明日に控え、気になるニュースを目にした
バイデンの認知能力低下を取り上げるものである
サンダースは78歳であることは知っていたが、バイデンも77歳である
この問題は前から燻ぶっていたようだが、大々的には取り上げられて来なかったようだ
前半の戦いでは殆ど死んでいたので、注目する人が少なかったからではないかと思われる
ただ、ここに来て最有力候補となり、選挙戦での言い間違いが無視できなくなったということだろう
例えば、自分は上院議員に立候補していると言ったり、演説中に文章を作り終えることができない
あるいは、いつ大統領になるのか、今どの町に来ているのかも答えられないこともあるという
この世界のどこに自分がいるのか分からなくなっているというのだ
民主党の中枢はバイデンをできるだけ表に出さないようにしようとしているという
しかし、この状態で民主党の候補になったとしてもトランプとの討論会を乗り切ることができるのか
もちろん、バイデン個人に対する批判ではない
たとえ彼が大統領になったとしても職責を全うできるのかという問題だという論調である
サンダースはこの点への言及を避けている
いずれにせよ、明日の討論会がどのように展開するのか、注目したい
2020年3月13日金曜日
COVID-19 に対するフランスの対応
昨夜、マクロン大統領が COVID-19 に対する対応を発表した
以下に大使館から届いた纏めの概略を書き出しておきたい
行き届いた、熱を持ったアノンスと言えるだろう
(1)最も脆弱な人々の保護
・フランスは感染拡大の初期段階に過ぎない
・国民の健康が最優先、科学に対する信頼に基づく行動が重要
・病院の受け入れ能力を大幅に拡大するための措置を取る
・全ての70歳以上の高齢者、慢性病患者、呼吸器系患者、障害者に対し、可能な限り自宅待機を求める
(2)感染拡大の減速
・3月16日以降、新たな指示があるまでの間、保育所、小中学校、高校、大学は閉鎖
医療関係者が仕事を続けるための保育手段を確保する
企業に対し、テレワークの促進を推奨
・市町村議会選(3月15日及び22日)は、投票所の感染対策を行った上で予定どおり実施
・公共交通機関の運行は継続、移動は必要最小限度にするように
集会を可能な限り制限する措置を発表する予定
(3)経済対策
・困難な状況にある労働者、企業を守るためあらゆる手段を取る
部分的失業制度(ワークシェアリング)を導入する
自宅待機を余儀なくされた従業員に対し政府が補償する
証拠書の提出・手続・追徴金なしに、全ての希望する企業が3月分の納税を延期可能
・欧州は連携して対処すべきで、欧州中央銀行(ECB)は更なる措置を取る必要がある
全ての欧州各国は企業活動を支える措置を取るべき
(4)国際社会の連携
・G7、G20の役割に期待
明日にでもトランプ米大統領と電話会談し、G7での特別なイニシアティブを提案する
・妥当と判断される場合、国境封鎖措置が取られる可能性はあるだろうが、実施は欧州レベルで行うべき
日常生活では、しっかりとした手洗いの励行、握手やビズは避けることなどに気を付けること
そう言えば、昨日のYoutubeでロバート・ライシュさんは肘を合わせてお相手の女性と挨拶していた
エピステモロジー(14)
暫くご無沙汰していたが、信頼性主義について続けることにしたい
信頼性主義(3)
少しでも信念が信頼性ある認識過程に由来するとすれば、S の信念は正当化されると言うのは不十分である
なぜなら、S はこの信念を正当な理由で弱める可能性があるものを考慮しなければならないからである
もし S が5歳の時に赤い自転車を持っていたことを思い出すとすると、彼の信念においてはそのことが正当化される
それを信じることを妨げる信頼性ある過程があれば別であるが
例えば、S は子供時代の記憶の信頼性を疑う心理学者(そして大部分の人間)の証言を無視すべきではない
従って、次のようなフォルミュール(ゴールドマンを改変)に辿り着くだろう
S の p に関する信念が正当化されるのは、次の二つの条件が満たされた時だけである。(1)それが信頼性ある認知過程によって生まれたものである場合、そして(2)S の信念が形成された過程の他に、それに従ったとしても S が p を信じることにはならないような信頼性ある、あるいは条件付きで信頼性ある過程がない場合。このように、信頼性主義の単純さ(我々の信念は信頼性ある過程によって正当化されるとする)は幾分失われる
ゴールドマンはこのフォルミュールに問題がないわけではないことを認めている
本質的なことは、知識の定義から認識論的正当化の条件を作るのは止めるというのが妥当だということである
信頼性主義は、知識であるべきもののアプリオリの基準を提案するのではなく、知識の事実から出発する
知識の形成のされ方を記述し、それに影響を与える枠を明確にしようとするのである
(つづく)
2020年3月11日水曜日
オスヴァルト・シュペングラーの技術論
雑誌『医学のあゆみ』に連載中のエッセイ「パリから見えるこの世界」第89回のご紹介です
「シュペングラーの技術論、あるいは近代文明の宿命を逃れる道はあるのか」
(医学のあゆみ 3月14日号、272: 1171-1174, 2020)
お目通しいただければ幸いです
アメリカ大統領民主党予備選
今日の選挙結果によれば、ミシガン、ミシシッピ、ミズーリなどでバイデンが差を広げている
民主党の主流や意外にも黒人票がバイデンに流れているのだろうか
このまま行けば、バイデンに決まりそうである
個人的にはあまり驚きのなさそうな展開になった
そして、サンダースによれば「嘘つきトランプ」だが、その再選は揺るがないかもしれない
2020.3.11
サンダースが火曜の選挙後、初めて演説した
選挙戦はさらに継続するようだ
まず第一に、病的な嘘つきで、憲法も読んだことのない、法律の上に自分を置く現職を追放する必要がある
今のところ選挙人の総獲得数では劣っているが、重要なカリフォルニアやワシントン州では勝っている
多くの人は、冨の不平等の改善、最低賃金の上昇、大学授業料の無料化、医療制度の改革などには賛同している
バイデンは65歳以上では勝っているが、これからの若い層では自分が勝っている
ただ、エレクタビリティー の問題がある
トランプに勝てるのは誰かということで、多くの人がバイデンだと見ているが、自分はそう考えていない
日曜のバイデンとの討論会では、現在の問題点をしっかり追及し、どちらが適当な候補かを示したい
2020年3月10日火曜日
COVID-19 の現況(2020.3.9)
今日もCOVID-19の様子を見ることにしたい
世界における罹患者数は、110,297
昨日より3,900人ほど増えている
感染していても症状を示さない人が20%程いるが、他の人を感染させる可能性がある
これが非常に速く感染が広がる理由になっている
潜伏期は、1-14日
典型的な症状は、乾性咳、発熱、筋肉痛など
各国の状況
イギリス 273(昨日より64人の増加)、死亡 3
ミラノなどからのイギリスへの飛行機便は運航中
症状の有無にかかわらず、イタリアから戻ったら2週間は自らを隔離すること
イタリアへの旅行は極力避けること
アメリカ 557、死亡 20
33州とDC
オレゴン州では学校、大学の閉鎖は最後の手段
イタリア 7,375(+1,400)1日の増加数が多い
韓国 7,478(+250) 、死亡 51、 14万件の検査
1日の増加数が減っているので、隔離の効果が表れ始めている
ドイツ 1,112 1,000人以上の集会禁止
フランス 1,209
2020年3月9日月曜日
COVID-19 の現況(2020.3.8)
先日発見したジョン・キャンベルさんのYoutubeでCOVID-19の現況を観る
詳細は観ていただくことにして、簡単に纏めておきたい
キャンベルさんの現状認識は厳しく、1918年のスペインかぜ以来、最も警戒すべきものだと見ている
ワクチン開発などはマンハッタン計画、アポロ計画並みの試みが必要である
何かが起こってから反応する(reactivity)のではなく、前もって準備する(proactivity)必要がある
世界における感染者数は106,369人で、その80%は軽い症状だが、15%はかなりの病気になり、5%が重症だという
100万人が感染するとすれば、5万人は重症になるという計算だ
世界各国の状況は以下のようになっている
イタリア: 感染者5,883人中、233人が死亡で、致死率が4%近くになり、非常に高い
中国: 武漢では新たに44人の感染例が分かったが、それ以外では見つかっていない
ただ、海外から戻った3人の感染が確認されている
ワクチンなどの治療法がない中、隔離だけでこれだけに抑えている
プロアクティブな対応が有効であることを示していると見ている
フランス: 感染数、969
ドイツ: 800人の感染者はいるが、なぜか死者は出ていないという
アメリカ: 433人が感染し、19人が死亡しているが、ワシントン州に集中しているようだ
アルゼンチン:9人の感染で、1人が死亡
イラン: 感染者は5,823人
韓国: 感染者7,313人で、50人が死亡(致死率が0.7%と低い)
イギリス: 感染者数、209(ラグビーなどの試合はやられていて、プロアクティブではない)
オーストラリア: 感染者数76、3名の死亡
アフリカ: 45人の感染者
まだまだ真剣な受け止めがされておらず、プロアクティブな態度が求められるとの結論
2020年3月7日土曜日
サイファイ研究所 ISHE、春の活動のご案内
サイファイ研 ISHE の春の催し物を紹介いたします
第8回サイファイ・カフェ SHE 札幌
日時: 2020年4月25日(土)16:00~18:00
会場: 札幌カフェ 5F スペース
テーマ: オスヴァルト・シュペングラーの技術論を考える
サイト ポスター
第15回サイファイ・カフェ SHE
日時: 2020年5月13日(水)18:30~20:30
会場: 恵比寿カルフール B会議室
テーマ: オスヴァルト・シュペングラーと共に技術を考える
サイト ポスター
第7回サイファイ・フォーラム FPSS
日時: 2020年5月16日(土)13:40~17:00
会場: 日仏会館 509会議室
話題: 1)「科学と哲学」シリーズ ① わたしの認識論(矢倉英隆)
2)変性意識と無意識(渡邊正孝)
3)Live版!「パリから見えるこの世界」 in 東京(岩永勇二)
サイト ポスター
第8回カフェフィロ PAWL
日時: 2020年5月20日(水)18:30~20:30
会場: 恵比寿カルフール B会議室
テーマ:プロティノスの哲学から生き方を考える
サイト ポスター
第6回ベルクソン・カフェ(2回シリーズ)
日時: 2020年6月4日(木)、11日(木)18:00~20:30
会場: 恵比寿カルフール B会議室
(1回だけの参加でも問題ありません)
テクスト:Louis Althusser : Que disent les « non-philosophes » ?
ルイ・アルチュセール:「哲学者でない人」は何を語るのか
Invitation à la philosophie pour les non-philosophes(2014)
『哲学者でない人のための哲学入門』の第1章
(参加予定者には予めテクストをお送りいたします)
サイト ポスター
興味をお持ちの方の参加をお待ちしております
エピステモロジー(13)
信頼性主義(2)
欠陥のある過程は何か共通のものがある
それは、「信頼性の欠如」を共有し、殆どいつも間違いを生み出す傾向があるということである
反対に正当化を付与する過程は、「信頼性」という一つの特徴を共有している
それは、一般的に正しい信念を生み出す
ある信念の正当化の状態は、信念の原因となる過程の信頼性と関連する
その信頼性が、間違いではなく正しい信念を生み出す過程の傾向から成るという限りにおいて
従って、正当化は S がその信念について持たなければならないメタ認知的信念の問題ではない
例えば、デカルトの場合のように、無謬性、反証不可能性、確実性などの基準を満たすというような
そうだとすれば、子供(や動物)の信念の正当化をすべて禁じることになるだろう
我々の信念が信頼できる過程によって正当化されるためには、その過程が完全に無謬性である必要もない
すべての機能不全に対して保証されていなくても信頼できる過程として受け入れる
条件付きで信頼できるもの、すなわち、一般的に正しい信念に導くものでさえあればであるが
(つづく)
2020年3月6日金曜日
アメリカ大統領民主党予備選
本日は朝から用事がありパリへ
パリも雨であった
ところで、モンパルナス駅の階段を上っている時、何がどうなったのか分からないまま前に転倒
前の男性を巻き添えにしてしまい、申し訳ないことをした
振り返れば、足が想像したよりも上がっていなかったということだろう
心身のコーディネーションがうまくいかなくなっているということか
周りを歩いていた女性陣がサヴァ?と言いながら寄って来てくれた
こういうことが平地でも起こることがあるので要注意である
さて、スーパーチューズデーの後でブルームバーグが撤退したが、バイデンの支持に回ると表明
バイデンにとっては大きなサポート(特に資金面で)になりそうである
サンダースは直前の討論会で、ブルームバーグから提示されても金は受け取らないことを表明
彼の選挙資金はすべて一般の人からの小口のものだが、十分に集まっているとのこと
その上で、バイデンは60人?の大金持ちから献金を受けていると言っていた
ここに来て、なぜすべての候補がバイデン支持に回ったのだろうか
一つの指摘は、この選挙は民主党の精神を問うものだということ
バイデンは、革命ではなく結果を求めていると言っていた
彼はヒラリー・クリントンと重なるように見える
それらしく見えるのである
結局、バイデンは民主党の、そして社会のエスタブリッシュメントに属しているのではないか
エスタブリッシュメントという言葉には敏感のようで、労働者がエスタブリッシュメントだと答えていたが、
本当の反エスタブリッシュメントか、どこかでエスタブリッシュメントと繋がっているのか
今回は、その辺りの選択になりそうである
しかし、今の流れは余り急進的なやり方は望まれていないように見えるが、どうなのだろうか
エリザベス・ウォレンが予備選から撤退するようだが、サンダースの支持に回るかどうかは不透明のようだ
これまでの考え方はかなり近かったようなのだが、、
来週の火曜にも選挙があるので、もう少し追ってみたい
ここまで書いたところで、ロバート・ライシュさんの Youtube がアップされた
詳細な解説がされているので以下に貼り付けておきたい
2020年3月5日木曜日
エピステモロジー(12)
信頼性主義(1)
ここで再び、懐疑主義の挑戦に戻ってみたい
それは、最も深く根付いている我々の直観の一つに突き当たる
すなわち、我々は多くのことを知っているというものである
個人的に振り返っても、人間は本当に多くのことを知っているということに日々驚いている
懐疑主義の挑戦に答えるということは、普通の規範とは異なる認識論的正当化の規範を処方することである
この規範を適用することで懐疑主義を回避できる
認識論的正当化は、ある信念が正当かどうかを決めることを可能にするメタ認知的信念に基づいている
それを軽んじることは、認識論的に間違っており、無責任であることになる
しかし、懐疑主義者は策を弄すること巧みである
要求水準を上げ、規範は満たすことが不可能になる
もう一つは、我々の確実な直観を考慮に入れるやり方である
つまり、普通の規範が最終的には十分に満足のいくものであることを説明することである
アルヴィン・ゴールドマンは、ある信念はそれを正当化する過程や特性から正当化された状態を引き出すとした
従って、信念を正当化する過程がなければならない
しかし、主体が理由を持ち、それがその信念を持つことを正当化することを意味しない
アメリカ大統領民主党予備選
スーパーチューズデーを終わった段階での代議員獲得数は、大体以下の通りとなった
ジョー・バイデン 467
バーニー・サンダース 392
サンダース包囲網が効いたのか、取ると思われていた大票田のテキサスなどを落とした
やはり優勢が伝えられていたカリフォルニアも落とすことになると難しいと思っていた
しかし、そこは踏み止まったようである
代議員の過半数に当たる1,991にどちらが到達するのか
これからも折に触れて覗くことになりそうである
(つづく)
2020年3月3日火曜日
ロバート・ライシュさん、第二弾
ロバート・ライシュさんの Youtube が面白いので、最新のものをもう一つトライした
茶目っ気もあり、なかなか良い
だが、何といってもその活力だろうか
今年の大統領選を民主党の側から見るのに大いに参考になりそうである
しかも楽しみながら
2017年にフランスの大統領選を追いかけたことを思い出した
スーパーチューズデーを前に、バーニー・サンダースに包囲網が築かれつつあるようだ
サンダースによれば、彼の政策がアメリカの構造を変える可能性があるため、民主党の中枢が恐れているとのこと
彼の運動は若い人やマイノリティを喚起する力があり、その力がなければトランプには勝てない
ジョー・バイデンは権力の中枢と結び付いていて真の改革はできないし、人びとを喚起する力もないと見ている
ロバート・ライシュとバーニー・サンダース
数日前にアメリカの大統領予備選挙の様子を見るために Youtube に行った
アメリカの生の雰囲気に触れるのは何年振りだろうか
いつものように言葉に込められた活力に感心する
おそらく、精神活動のレベルが反映されているのだろう
たまに Youtube で見る日本の政治家の淀んだ言葉とそこに漂う雰囲気とは比べ物にならない
今日は思いもかけないものを見つけた
クリントン大統領の労働長官をやっていたロバート・ライシュ氏が Youtuber になっている
上のビデオでは、バーニー・サンダースに出されている疑問符に答える形で応援している
非常に分かりやすい
もう一つ、ライシュ / サンダースの対談を見つけたが、こちらも活発な議論が行われている
お二人の距離感が何とも言えず良い
出されている問題は日本のそれと殆ど重なっているので、参考になる
日本でも落ち着いた議論が必要になるだろう
ライシュ 73歳、サンダース 78歳
活力溢れるご老人である
こちらも元気になる出会いであった
2020年3月1日日曜日
エピステモロジー(11)
認識論的正当化(5)
問(2):認識論的正当化に対する回答は知識の定義を経るのか
この問に対するポジティブな反応の一つの前提は、ピーター・ギーチが「ソクラテス的詭弁」と呼んだものである
プラトンの対話篇で、ソクラテスはある「もの・こと」を定義できなければ、それを知ったことにはならないと主張
つまり、何が美しいものなのかを知るためには、美とは何であるのかを知らなければならない
同様に、正しいことを知るためには正義を、信心深い行動を知るためには信仰心を定義しなければならない
多くの哲学者は、それが彼らに立派な役割を与えるという理由で、簡単に信じてしまった
知っていると主張する人に何も知らないことを示し、定義の専門家を自称するのである
しかし、子供はどちらも定義できないのに、父親とぬいぐるみの熊を明らかに識別している
その子供に、指さすだけでは不十分で、ぬいぐるみの熊とは何であるかを言わなければならないと訊いてみる
そうすることは、子供を苦労せずにソクラテスにすることでもあるだろう
犬でさえ、定義することなしに食べ物と入れ物を区別する
犬は入れ物でなく食べ物を食べる
定義には全く依存しない知識のケースである
医師は目の前の患者がその病気であるか知らなくても、病気であるための必要十分条件(定義)を知っている
X の定義は X の一例を同定する能力とは一致しない
しかし、それは知識としては有用である
ゲティア問題は知識の古典的な定義が不十分であることを示すものであった
間違った考えを排除することは、決して時間の無駄ではない
エピステモロジーの進歩、一般的には哲学の進歩というものは、おそらくそういうものだろう
ゲティア問題に関連する論争が巻き起こした知的興奮は、次のようなことに関するものであったと言えるだろう
それは、ある特定の場合に S が p を信じることが正当化されるか否かを知るという問題を省察することであった
ゲティア問題が議論の余地のない解決を見ることはなかった
しかし少なくとも、p を知ることと p の正当化された真の信念とは同じものではないことを知ることになった
それは、数百の論文の著者の努力のお陰である
エピステモロジー(10)
認識論的正当化(4)
大陸哲学者の中には、実存的、政治・文化・歴史的問題を無視して哲学するやり方に軽蔑しか示さなかった者がいる
フレッド・ドレツキにとって、知覚、証言、証拠、記憶、情報などは我々の知が形成されるされ方である
しかし、知覚、証言、証拠、記憶は「演繹の下に閉包」されていない
(1)もし S が p と、p が q を導くことを知覚しているとすれば、S は q を知覚することになる
(2)もし S が証言により p と、p が q を導くことを知ったとすれば、S は証言により q を知ったことになる
(3)もし S が p と、p が q を導くことを証明したとすれば、S は証言により q を証明したことになる
(4)もし S が p と、p が q を導くことを覚えていれば、S は q を覚えていることになる
しかし、ドレツキによれば、(1)ー(4)は間違っている
ただ、知り方の失敗は認識的閉包性の原則が間違っていることを意味しないと答える人がいる
それは単に、我々が知っているものの先にあるものを我々は知ることにはならないことを示しているだけである
すべて問題は、次のフォルミュールが正しいかどうかである
(5)もし S が知覚、証言、証拠、記憶により p と、p が q に導くことを知れば、S は q を知っていることになる
しかし、「演繹的閉包性の原則」が間違ってなくても(5)は間違っているかもしれない
ゲティアの論文からこのような些末で形式的な議論を展開する営みを考える時、基本的な前提に気付く
それは、エピステモロジーは最終的には知識を必要十分条件において定義しようとするものだということである
ここで、二つの問いを出すことができるだろう
(1)知識の定義に至ることは可能なのか
(2)認識論的正当化に対する回答は、知識の定義を出してからなのか
問(1) は、知識のような概念を定義するとはどういうことなのかについて自問するところに導く
哲学者の中には、一般的な概念(知識、芸術、宗教など)は必要十分条件では定義できないと考える人がいる
そのような定義は、本質主義的な定義と言われる
寧ろ、同じファミリーの人間が持つとされる型の類似性を持つものとして理解する方がよいと考えるのである
ウィトゲンシュタインによれば、ゲームの必要十分条件は存在しない
しかし、そうだと我々に知らせるファミリーの類似性がゲームの間にはある
本質主義的定義を拒否することがすべての定義の試みを禁じることになるとは必ずしも言えないだろう
さらに、問(1)に対するポジティブな回答が問(2)に対するポジティブな回答を意味しないこともある
知識の適切な定義をすることはできるかもしれないが、それが認識論的正当化の問題解決にはならないだろう
(つづく)
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