Barthold Georg Niebuhr (1776-1831)
1831.3.21(月)
「フランス語のエスプリespritは、われわれドイツ人がヴィッツ Witz [機知] と呼んでいるものに近いね。われわれのガイスト Geistを、おそらくフランス人たちはエスプリとアーム âmeとで表現するだろうよ。この語のなかには、同時に生産という概念もあるが、フランス語のエスプリにはそれがない」
「ルイ一四世(1638-1715)以来 [文学は] 成長し、ついに全盛期に達したというわけだ。しかし、ディドロ(1713-1784)やダランベール(1717-1783)やボーマルシェ(1732-1799)やその他の天才を煽り立てたのは、そもそもヴォルテール(1694-1778)だったのだ。なぜなら、彼に伍してひとかどのものであるには、たいへんな才能をもたねばならなかったし、また休みなく努力せねばならなかったからね」
1831.3.22(火)
「ニーブール(1776-1831)は、野蛮な時代がくる、といっていたが、それは正しかった。その時代はすでにきている。われわれはもう、そのまっただ中にいるのだ。なぜなら、野蛮であるということは、すぐれたものを認めないということではないか」
1831.3.25(金)
「安楽というのはどんなものにしろ、元来、まったく私の性質にあわないのだ。私の部屋にはソファは一つもないだろう。私はいつも昔からの木の椅子にすわっているのだが、それでもやっと数週間前から頭をささえる寄りかかりのようなものをつけた程度なのだ。安楽で、上品な家具を身のまわりにおくと、考えがまとまらず、気楽な受動的状態になってしまうのだ。若いときからそうした環境になれているなら別だが、きらびやかな部屋や、しゃれた家具とかいったものは、思想ももたず、また、もとうともしない人たちのためのものだよ」
(山下肇訳)
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