2022年10月29日土曜日

第8回サイファイ・カフェSHE 札幌、無事終わる




















今回のSHE札幌は、「『免疫学者のパリ心景』を語り合う」というテーマで開催した

最近気づいたのだが、このテーマは世の中の人がすでに拙著を読んでいることを前提としたものであった

その辺の感覚のずれは、3年に及ぶお休みが齎したものだろう

そのため逆に、この本を読み込んだ方が参加されることになった

会の進行は、最初に全体的な印象を伺った後に、それぞれが感じた個別の問題について話すことにした

以下、アトランダムに会での会話をピックアップしてみたい


A氏は、次のような印象を語った

表紙やパリを感じされる全体の雰囲気に編集者のよい嗜好が感じられた

さらに、エッセイシリーズを読んでいた時よりは本書の方が全体に流れが出ていて、非常に読みやすくなっていた

10年に亘って書かれたものだが、文体の揺れがないので、すでにある程度出来上がってから書き始めたのではないか

ただ、第3章の科学者を扱ったところが引っ掛かった

それから、索引があるとこの本を使う上でよかったのではないだろうか

若い人にも読んでほしいが、どれだけ話が通じるのか分からない

やはり、死を意識した人に、より受け入れられやすいのではないか


B氏は、第1章で科学から哲学に入る過程が語られていたが、そこに著者の勇気を感じたとのこと

C氏は、自分が本を見る時に重視している美しさがこの本にはあった

例えば、紙が真っ白で質が良く、作りが非常に丁寧であることが分かった

また、写真のレイアウトなどにもセンスの良さを感じた

内容に関しては、思考が手に取るように分かり、流れがあるため、楽しく読むことができた

自分が思考していることを語っているので、押しつけがない点も目に付いた

すでに60歳を超えているので、この著者のように考えていきたいと思わせてくれた


A氏も読みながら、自由なものの見方が示されているために楽しくなったとのこと

この効果は、狭い見方をしている若い人の気持ちを楽にすることに繋がるのではないか

この本には宝物になる言葉が溢れていた

B氏は、7ページにある「残りのすべての時間をこの世界をできるだけ統合的に理解するために費やそうと決意することになった」という言葉は、物理学者の目指すところと通じるところがあることを指摘

C氏は、251ページの図3について、右側の科学の中に哲学的な要素が入り込むイメージと絶対的真理との繋がりについて考えていたとのこと

 これは、絶対的真理に至るには哲学の関与が欠かせないのかという疑問だろうか

 わたし自身は、その問いにOuiと答えるだろう

それから、著者はいろいろなものを読み込んでいるため、全体に厚みがあるという印象で、良い言葉にも溢れている

ただ、本から離れている若い世代がこの厚さに耐えられるのかどうか分からないところがある


そのことともどこかで関係しているのだろうが、A氏から次のような発言があった

仕事を離れて face to face で話し合う機会が、特にコロナが始まってからは激減している

その点からも、このような会には意味があるのではないか

C氏は、トルストイの『人生論』から論を進めている個所(202ページ)についてコメントされた

それは、意識の第三層での精神活動だけでは不十分で、そこから他者との関係の構築へと進めなければならないという議論であった

これも真剣に他者との会話を構築すること、さらにそれはこのような会の意義にも繋がることを指摘するものになっているのではないか


A氏は、エネルゲイアという時間の捉え方(82-87ページ)を掴みつつあり、これまでの見方が良い方向に変わりつつあることを指摘

これなども実際の生活に役立つ知恵が鏤められていることの一例ではないかとのこと

また、今準備が進んでいるという免疫に関する本にも期待しており、それはこの本を補完することになるのではないか

つまり、この本を読んだ人が免疫の本を読み、逆に免疫の本を読んだ人がこの本に戻ってくるという具合に

そうなれば素晴らしいのだが、


最後に、C氏がラッセル・アインシュタイン宣言(275ページ)に絡めて、軍事研究をどう扱っていけばよいのかという現実の問題が提起された

意識の第3層までを動員せよとは言われるが、具体的にこのような問題をどのように考えて行けばよいのかという問いである

これは月初めのFPSSでも出された、現実の問題にどう向き合うのかという問いに繋がるものであった

今日はこのあたりで終わりを迎えた

じっくり読み、議論に参加された皆様に改めて感謝したい































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