2022年12月29日木曜日

コリングウッドによる自然(73): 現代の自然観(15)新しい物質論(4)


















Albert Michelson (1852-1931)



この後、大きな物質とエーテルの二元論を再考する必要が殆どなくなった

なぜなら、各瞬間において同一な物体から構成され、内在的な延長と質量を持つ物質が消えたからである

エーテルも、マイケルソン=モーリーの実験により消えることになった

この実験は、光が静止した媒体の中を伝達する乱れではないことを最終的に証明したのである

しかし、古い二元論の奇妙な遺物は、現代物理学の中に未だに生きている

光線だけではなくすべての電子は不思議にも、曖昧に行動することを現代の物理学者が証明した

時には粒子のように、時には波動のように動くのである

次に問われるのは、本当はどちらなのかということである

両方であるということは殆どあり得ない

なぜなら、もし電子が粒子ならば波動のようには振舞えないし、波動であれば時に粒子として振舞えないからである

そこで、ある物理学者は自らの心の状態をこう表現した

月水金には粒子説を信じ、火木土には波動説を信じている、と

粒子説は古典的な物理学の大きな物質という考えの幻影であり、波動説はエーテルという考えの幻影であることが明確になる

考えが死んだ時、幻影は歩き出すが、永遠にではない

現代の物質論では、電子は粒子ではあり得ない

なぜなら、粒子とはそれが成すこととは関係なく在る物質のことだからである

また、電子は波動でもない

波動というのは弾力性ある媒体における乱れのことで、その媒体は乱されていることとは関係なく、延長と弾力性を持つものだからである






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